マンションの窓の断熱化


YSエネルギー・リサーチ 代表

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 無理をしないで、我慢をしないで、エネルギーの消費を減らすのにはどうすれば良いかを考えるべきだということを、ロッキーマウンテン研究所の共同創立者であるエイモリー・ロビンス博士の著書、「Reinventing Fire」、邦題「新しい火の創造」(ダイヤモンド社)を翻訳する過程で再認識してから、その視点でエネルギー消費に関わる情報を収集している。その基本には、無理、我慢は長続きしないで元に戻ってしまうという常識的な発想があると言える。

 エネルギー効率の高い生活・事業を継続するには、ある程度の投資も必要なのだが、その投資をその投資対象の寿命が終わる前に回収できれば良いとしよう。その中でもっとも簡便で効果が高いのが窓に複層ガラスと樹脂サッシを使用することだ。これは家屋だけではなく、ホテルや病院、店舗などにも言える。だが、複層ガラスが普及するようになったのは最近で、少し年数の経った建物の窓ガラスはほぼ全てが単層ガラスとアルミサッシを使っている。下の資源エネルギー庁の資料でも示されているが、住宅の熱損失がもっとも高いのは窓の開口部である。ここの断熱効果を上げれば目に見える経済効果も生まれるという確信から、本コラムでも2015年に3回ほど、内窓を追加する方策などについて述べたのだった。しかし、内窓を自分の手で取り付けて分かったことは、断熱効果は大きいのだが、外窓と内窓があるために窓の開閉が不便になるということだった。複層ガラス内窓設置には補助金が出るのだが、最近は一時ほど促進努力はなされていないように思える。この不便さが足を引っ張っているに違いない。

 最近大阪で開催されたエネルギー関係の展示会を訪れた時に、ある住宅関連メーカーのコーナーで、厚みがかなり大きくなる複層ガラス窓を取り付けられるような樹脂枠を既存の枠の内側に取り付けて、窓を入れ替える新工法を展示しているのに出くわした。係員に尋ねてみると、予め窓の採寸をして、それに合わせた枠と硝子窓を工場で作成しておいて取り付けるため短時間で施工できるという。そして、セールストークだから割引く必要はあるが、施主の満足度は高いということだった。たまたまマンションに住む友人がリフォームをしたいと聞いていたので、マンションへの取付について尋ねたところ、係員の返事は驚かされるものだった。窓の外側部分はマンション建物の壁面として共用部分となっているために、そのマンションの管理組合規約に従った住民の合意を得ないと工事が出来ないというのだ。規約上内枠取付が可能なものでも、組合の合意は必要なので、その手続きの煩わしさから敬遠されるらしい。ほぼ無理だと考えた方が良いというのが係員の言葉だった。

 この係員の説明をそのまま受け取ると、膨大なストックがある中古マンションの高断熱化は実現できないということだ。マンションは、天井、床面、壁面が別の住居部分と接していて直接外気に曝されていないものが多いから、窓の複層ガラス化による断熱効果は戸建て住宅よりはるかに高くなる。外観を大きく変えるものでなければ、管理組合の規約が大きな障害にならないような新しい制度を導入できないものだろうか。


出典:資源エネルギー庁資料