今日からできる地球温暖化対策!
エコドライブのススメ
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
(「月刊ビジネスアイ エネコ」2017年9月号からの転載)
日本の二酸化炭素(CO2)排出量(12 億2700 万トン)のうち、運輸部門からの排出量(2億1300万トン)は17.4%を占めています。パリ協定や国連に提出した約束草案を踏まえて策定された「地球温暖化対策計画」(2015 年5 月閣議決定)では、2030年度時点で温室効果ガス排出量を日本全体で2013年度比26%削減する目標を掲げていますが、運輸部門(自動車、航空、船舶、鉄道)においては約28%削減する必要があります。運輸部門からの排出量の約9割は自動車から。今回は、削減目標の実現に向けて、「エコドライブ」(環境に配慮した自動車運転)に注目します。
エコドライブのポイント
国内の運輸部門のCO2 排出量は2000年ごろをピークに順調に減ってきています。その間、交通量や輸送量、乗用車の走行距離などはあまり変わっておらず、燃費改善やトラックの輸送効率の向上などにより排出量が低減したとみられています。ほかに、道路環境の整備や適切な運転方法も排出量削減に影響を与えます。車からのCO2 排出は走行中がもっとも多いため、ユーザー側の取り組みがとても大事です。
自動車業界も積極的にエコドライブに取り組んでいます。トヨタ自動車では、2013 年10 月に「FUN TOECO-DRIVE」プロジェクトをスタートさせ、自社内、販売店、レンタリース店などで推進しています。同社環境部にエコドライブのポイントについてうかがいました。
「一番良い燃費で運転できるよう、うまく使うことが大事です。燃費をもっとも悪くするのは急加速。発進の際は、ふんわりアクセルでゆっくり加速してください。警察庁、経済産業省、国土交通省、環境省が提唱する『エコドライブ10のすすめ』にもありますとおり、最初の5秒で時速20㎞程度まで徐々に加速し、その後なるべく一定速度を保ちます。一方、減速する際は早めに足をアクセルから離してエンジンブレーキを作動させます。このように急加速や急減速が少ない運転や、車間距離にゆとりを持って加減速の少ない運転をすることがコツです」
「また、5秒以上の停車ならエンジンを止めたほうが燃料の節約になります。無駄なアイドリングは止めましょう。エアコンは燃費に大きな影響があります。エアコンを使用しますと燃費が悪化します。気候の良い時はスイッチをOFFにすることが大切です。またタイヤの空気圧を適正値にすることや、不要な荷物は降ろすようにします。そして大切なことは、自分の車の燃費を知ることです。車に装備されている燃費計で日々の燃費を知ることができます。また、エコランプやインジケータを活用すると、より効果的なエコドライブができます」
ハイブリッド車のエコドラ
国内の新車市場で約3割のシェアを持つハイブリッド自動車は燃費が良く、CO2排出削減に貢献しています。このほか、走行時にCO2を排出しない電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)の普及が拡大していくと排出削減効果は大きくなりますが、コストダウンが大きな課題で、自動車メーカー各社が取り組んでいます。
――ハイブリッド車のエコドライブのポイントは?
「従来の車で推奨しているエコドライブの方法が基本ですが、ハイブリッド車の場合はさらに、モーターでの走行と回生ブレーキの使い方にコツがあります。発進の際は、ふんわりとアクセルを踏みモーターによるEV 走行をしてください。時速20km くらいまで加速したら、アクセルをさらに踏み込んで目的速度まで速やかに加速します。目標速度に達したら、アクセルをいったん完全に戻します。その後、アクセルをじわっと踏んで、できるだけモーターで走行します」
「減速する際は、次の信号の状況を見定めて、早めにアクセルを戻します。ブレーキは緩やかにかけ、長めの距離で減速するのがコツです」
セーフティでエコな運転を
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書では、2100年には産業革命以前からの世界の平均気温の上昇幅が3.7~4.8℃に達する可能性があり、これを2℃未満に抑えるには、CO2排出量をゼロにするだけでなく、マイナスにしなければならないと指摘しています。
同環境部は、「当社は一昨年10月、『トヨタ環境チャレンジ2050』を発表し、2050 年に向け弊社が目指すべき方向を示しました。クルマの環境負荷をゼロに近づけるとともに、地球・社会にプラスとなる取り組みを通じ、持続可能な社会の実現に貢献するための新たな取り組みを進めています。その柱の1 つが『新車CO2ゼロチャレンジ』で、新車の走行時のCO2 排出量を2050年までに2010 年比90%低減させる目標を掲げています」
「走行時のCO2排出量を低減するためには、車の燃費向上に加え、エコドライブの普及などさまざまな取り組みを併せて行い、社会的なコストを下げていくことが重要です。当社も、次世代自動車の開発・普及を加速させていくとともに、全社でのエコドライブ実践に向けた取り組みを進めています。たとえば、レーシングドライバーによるトークショーを開催し、最速を目指すレースでも取り入れられているエコドライブの紹介や、啓発ポスターの掲示などで、社員の意識向上を図っています。」
エコドライブのメリットは、車のCO2 排出をかなり削減できること、排出削減コストがかからないこと、燃料代が節約できることなど、いろいろあります。また、「緩やかな発進」「車間距離をとる」「早めのアクセル・オフ」など丁寧な運転操作を心がけることは安全運転にもつながります。
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- 車の回生ブレーキ=ブレーキを踏んだりアクセルを緩めたりした際、車輪の回転力でモーターを回し、発電機として使う仕組みのこと。