太陽・風力発電の接続量限界


YSエネルギー・リサーチ 代表

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 気候条件の変化によって発電出力が変動する太陽・風力発電について、系統に接続される全体の規模が大きくなると、他の発電設備の出力を可能な限り下げても、あるいは、ダムに水を汲み上げるのに充当して消費しても、全体の発電出力が電力需要を超えてしまうことが起こる。電力の供給量と需要量は必ず一致していなければならないから、それが乖離すると電力系統が不安定になり、広域的な停電が起きる可能性もある。日本にも、太陽・風力発電が急速に導入されたために、このような不安定化の可能性が大きくなり、太陽・風力発電の出力を系統の指示に従って抑制するルールが各電力事業の供給区域単位に設定されている。

 最近風力発電についてこのルール適用の具体的な動きが見られた。
 九州電力はこの5月26日、風力発電設備の接続済み、承諾済み、および接続契約申込量の合計が25日時点で同社の接続可能量(30日等出力制御枠)の180万キロワットに到達した、と発表した。このため、26日以降の接続契約申し込み受け付け分については、無制限・無補償での出力制御に同意することが前提となる。これ以前に契約したものについては、720時間(30日)までを上限として出力を抑制させられることになっていたのが、今後はその制約が無制限になったのだ。東北電力は2月3日に接続可能量251万キロワットに到達したと発表している。無制限・無補償ということは、風力発電事業者は売電収入の予測が非常にやりにくくなるということで、今後の普及に大きな足かせをはめることになる。

 出力制御、言い換えれば、発電出来るのにしないということは、地球温暖化抑制に貢献する再生可能エネルギーをフルに利用できないということだ。電力供給を安定的に行うことの優先順位が高いとは言え、可能な限りCO2フリーの発電量を確保することも重要である。だが、現時点で出来ることは、余剰分を何かの形で蓄電する、あるいは、余剰が発生する時間帯に電力消費を増加させるということだろう。蓄電については、大容量の蓄電池に限らず、空気をタービンで圧縮するのに電力を消費し、放出時に発電する、あるいは、水の電気分解に消費し、できた水素を燃料にして電力需要が大きいときに発電するなど、日本も含めた世界各地で実証試験が行われている。

 実証試験ということは、コストも含めて実用になるまでに、可成りの時間がかかると考えても良かろう。そこで、大掛かりな設備投資を必要とせず、すぐに着手できるものはないのかと考え、海外の事例を眺めて見た。すると、気象予知を細かく行うことによって分かる余剰電力が発生する時間帯に、大型の冷凍冷蔵庫による電力消費を増強することで対応することが可能で、実行にあまり時間を必要としないということを知った。大規模電力消費者に向けたデマンドレスポンスと言っても良い。大型の冷凍冷蔵庫は、供給区域単位で見ればかなりの数が散在している筈だ。例えば、漁港、卸市場などが考えられる。設定温度を1~2度下げれば、冷凍機が連続して稼働し、その消費電力は大きいはずだ。それを幾つも重ねれば、余剰電力のかなりの部分を消費できるのではないか。それに協力してくれた冷凍倉庫事業者には何らかのメリットが出るシステムを設計すれば、温度制御システムを実現させるのに時間はかからないのではなかろうか。これに限らず、他にもこのようなものが既に検討、実行されているとすれば嬉しいことだが。