産業の主体間連携とは何?(その2)
―業務・家庭部門から国民運動まで繋がる主体間連携―
長谷川 雅世
国際環境経済研究所主席研究員、一般社団法人 環境政策対話研究所 理事
※ 産業の主体間連携とは何?(その1)
―ライフサイクルで考える製品・サービスの主体間連携―
業務・家庭部門の例
業務部門では、ESG投資の推進やグリーンボンドの販売・購入など、金融サービスを通じた取り組みが進んでいるとされている。
家庭部門においては、断熱をはじめとする建築物の省エネ性能の向上やエネルギー管理システムを用いた高効率・省エネ・節水機器の提供、クールビズ・ウォームビズによって、CO2排出量の削減に貢献している。さらに、LEDや省エネ型家電等をはじめとした低炭素製品や、HEMS(Home Energy Management System=ホーム エネルギー マネジメント システム: 家庭で使うエネルギーを節約するための管理システムで、家電や電気設備とをつなぎ、電気やガスなどの使用量をモニター画面などで「見える化」、家電機器等を「自動制御」するもの)をはじめとするサービスが導入されることで、一層のCO2排出量の削減へと繋がることが期待されている。
【建物のライフサイクルを通じた主体間連携のイメージ】
国民運動に繋がる取組み
低炭素製品・サービスが削減効果を発揮するには、効率性に優れた製品や、低炭素エネルギー源を利用する製品を開発すると同時に、利用者が賢く使うことが重要になる。家庭部門をはじめとする社会全体のCO2排出量の削減には、官民が協力して国民運動を推進し、一人ひとりが自らの意識や行動、選択を見つめ直し、ライフスタイルを変革していくことが重要とされている。
終わりに
以上、経団連の「低炭素社会実行計画」に沿って、主体間連携について概観した。温暖化対策は、これまで排出をする者としての企業に排出削減が求められてきた。主体間連携の観点で見つめると、個々の企業の活動は、社会に製品やサービスを提供するバリューチェーンの一部を担っていることがわかる。低炭素社会を実現するためには、製品のライフサイクルを通じて、全体的に取り組むことが求められる。「持続可能な生産と消費」という観点も、取り入れていく必要があろう。