電源のパフォーマンスを評価するアンシラリーサービス制度

米カリフォルニア州の取り組み


Policy study group for electric power industry reform

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3.3 調整済コストの算出

 CAISOは、入札額の評価を、予想コストに電源毎の実績から算出した確度を加味した調整済コストから行う。入札した電源の評価はこの調整済コストに基づいて行われ、調整済コストの低い電源から落札していく。ただし、決済価格は予想コストに基づいて決まる(詳しくは後述)。つまり、予想コストが同じ電源であれば、確度の高い電源が調整済コストを低く抑えられるので、落札に有利となる。

調整済コスト=予想コスト÷確度

 確度(Accuracy)の定義は、以下の通りである。
 CAISOは、各周波数調整電源に対し、4秒インターバルで負荷周波数制御(automated generation control、以下AGC)設定点〔MW〕の信号を送信している。確度は、AGC設定点に対してどれだけ正確に応答したかを表す指標であり、AGC設定点と実際の電源出力のテレメーター値を比較して算出する。実際の計算は次式で表され、15分間毎に計算される。

確度=(AGC設定点の15分間合計-偏差の絶対値の15分間合計)
÷AGC設定点の15分間合計

 上記の計算式は、15分間におけるAGC設定点に対応した電源の確度を反映し、0~100%の範囲となる。表3に確度の計算例を示す。表2において、確度は次のように計算される。(本例は1分間の確度の計算例である)

確度=( 200 - 21 )÷ 200 = 0.895 = 89.5%

表2 周波数上げ調整範囲における確度計算
(出所)文献2を元に筆者加工

表2
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3.4 落札電源の決定

 例題を使って、落札までの流れを解説する。表3は、周波数上げ調整の必要量100MWに対して、7台の電源が周波数上げ調整に入札した例である。入札情報に基づきCAISOは予想コストを算出、さらに確度を加味した調整済コストを計算し、調整済コストの低い順に落札順位を決定する。
 表3では、落札順位に基づいて電源G・A・C・F・Bの5台が落札している。電源Bについては、図3に示すように、入札した容量全てではなく、必要量100MWに到達するまでの残りの容量(20MW)が約定容量となっている。

表3 7台の電源による周波数上げ調整電源の落札プロセス
(出所)文献2を元に筆者加工

表3
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図3
図3 落札順位決定のイメージ
(出所)筆者作成
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 さらに、CAISOでは、落札電源の決定に際して、電源固有マイレージ乗数という電源毎に過去の運転実績から算出される乗数を用いて、各電源が供給可能なマイレージを計算し、系統におけるマイレージ必要量を満たしているかどうかのチェックを行う。
 電源固有マイレージ乗数は、当該電源が、過去の確度と認証を受けた際に登録した変化速度(分単位)を元に、次式により算出される。(表4参照)

電源固有マイレージ乗数(A6)=
系統マイレージ乗数(A1)×(10/認証された容量に到達するまでの時間(A3))×(電源の実績確度(A4)/前週の系統確度(A2))
表4 電源固有マイレージ乗数の計算例
(出所)文献3

表4
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3.5 決済価格の決定

 マイレージの決済価格は、落札された電源のうちマイレージ入札額の最高値が全電源に一律に適用される(Pay as Clear方式)。予想コストの決済価格も同様にPay as Clear方式で決まる。容量決済価格については、マイレージ決済価格と予想コストの決済価格から次式で算出する。

容量決済価格 = 予想コストの決済価格 - マイレージ決済価格×系統マイレージ乗数

 表3の例では、マイレージ決済価格は$1.00、予想コストの決済価格は$13.00、容量決済価格は$8.00(=$13.00-$1.00×5)となる。この容量決済価格は機会費用を含んだ金額となる。

 次に、周波数調整容量やマイレージ決済価格が、『周波数調整市場(前日)』と『周波数調整市場(当日)』で異なる場合、当該時刻の15分間のマイレージ決済価格は、『周波数調整市場(前日)』および『周波数調整市場(当日)』の両方のマイレージ決済価格の加重平均価格となる。
 例えば、ある電源が、『周波数調整市場(前日)』においてマイレージ決済価格$1.00で80MW、『周波数調整市場(当日)』においてマイレージ決済価格$2.00で20MWの周波数調整容量としてそれぞれ落札された場合、この15分間でのマイレージ価格は$1.20(=$1.00×80/(80+20)+$2.00×20/(80+20))となる。『周波数調整市場(前日)』で落札され、『周波数調整市場(当日)』で落札されなかった場合、決済価格は$1.00のままである。『周波数調整市場(前日)』で落札されず、『周波数調整市場(当日)』のみで落札された場合、マイレージ決済価格は$2.00となる。このようにして、マイレージ決済価格は電源毎に1つに決められる。

注2)
系統確度は、系統マイレージ乗数と同様、24時間帯別に1時間単位で計算される。対象時間帯の系統確度は、系統における電源の確度の過去1週間分の単純平均である。
注3)
認証を受けた際に登録した変化速度を用い、1~10の整数値が入る。数値が小さいほど、認証された容量に到達するのが早いことを表す。周波数調整力となるための条件として、各電源は10分以内に認証された容量に到達することが要求されている。
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