第3回 電力の安定供給とCO2削減の両立をめざす〈前編〉
電気事業連合会 森﨑 隆善氏(電気事業連合会 立地環境部長) ※インタビュー当時の役職
インタビュアー&執筆 松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
――非在来型のエネルギー資源の開発については?
森﨑:非在来型のエネルギー資源開発は国が主導しており、電力業界は直接的に関わっていません。ただ、日本近海に広範囲にあるとされるメタンハイドレードがうまく開発ができればアメリカのシェールガスのように国産エネルギーとして非常に有望になるでしょう。CO2の削減にも貢献できるますので、我々としても次世代エネルギーとして非常に期待しているところです。
温暖化対策の主な課題
――温暖化対策における直面する主な課題は?
森﨑:これまで電気事業としては、安全を確認した原子炉の活用、再生可能エネルギーの活用、そして火力の高効率化について供給側として取り組み、また流通の高効率化にも取り組んでまいりました。お客様に対して、電気の効率的な利用や省エネに関するPRにも取り組んできました。またエネルギー関連技術の開発も進め、これまで一定の成果が出ていると思っています。
原子力が停止している状況ではありますが、若干CO2排出係数が改善できて、直近の結果ですと、一昨年から昨年にかけて若干CO2排出係数が下がりました。再生可能エネルギーの導入が進んだ点と、火力発電所は古い経年火力も使っていますが、最新鋭のものを導入し、既設の火力発電所の性能を低下させずに維持した結果で、CO2排出係数として若干改善できました。(図5)しかし、再生可能エネルギーと原子力などのゼロエミッション電源が温暖化対策には必要不可欠です。CO2の大幅な削減を図るためには原子力の再稼働が必要になります。例えば100万KWの原子力発電所が稼働することにより、削減量としては年間300万t以上のCO2を削減する効果があり、大きな効果が期待できます。
――しかし、再稼働について世論は今も厳しい状況です。
森﨑:原子力に対するご理解を頂くための活動が、これまで十分ではなかったかと思っています。「安全だ」と言うだけでは駄目ですので、我々としてはしっかりとみなさんにご説明をし、ご理解を頂く地道な取り組みが必要かと思います。まずは多くの方に実際に見て頂くということも大事ですので、各原子力発電所の対策を地元の方にも見て頂き、理解して頂くという取り組みを進めています。信頼性の回復が大きな課題ですので、我々の取り組みはオープンにしていきたいと考えています。
――原子力の安全対策はどこまで進んでいますか?
森﨑:東日本大震災での反省を踏まえ、安全確保を第一に考え、新しい規制基準をつくり、原子力の安全対策を一層進めてきました。「緊急安全対策」「技術的知見の反映」「地震・津波」、「諸外国の取り組みの反映」「防災対策の強化」など、安全対策に終わりはありませんので、世界最高水準を目指して継続的に安全対策を改善していきたいと思います。(図6)
(後編に続く)