福島県双葉町の復興に向けたまちづくり
「荒廃した農地の再生モデル」
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
②水田再生活用拠点(約25ヘクタール)
まとまりのある農地(水田)を活かし、農業再生による原風景の回復を目指していきます。将来の食用米栽培の再開に向けて、燃料用資源作物や飼料用米(飼料に用いる多収品種の米)の作付けから始める計画です。燃料用資源作物として想定される作物は、菜の花やひまわり、多年生イネ科植物(エリアンサス等)などです。燃料用資源作物の栽培については、双葉町の農家のノウハウを活かしつつ、いろいろな人たちに参画してもらえる工夫をすることで、新たな就労場所としての展開もできそうです。また、燃料用資源作物を栽培することにより、農地を活用した再生可能エネルギー拠点となる可能性があります。圓場の大区画化や大型機械の導入により、効率的な営農と低コスト化を図っていきます。将来的には、復興組合や農地管理事業者に委託する予定です。
【課題】農業の担い手の確保、燃料用資源作物栽培の技術指導、高効率な営農に向けた農業環境整備などが主な課題で、支援が必要です。JA、NPO、行政、研究機関などとの連携や協力が求められます。
出典:双葉町
③次世代園芸チャレンジ拠点(約8ヘクタール)
津波リスクの低い場所では、太陽光利用型植物工場などの施設園芸や営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)など、新しい農業や新しい産業の創出を目指します。太陽光の他、太陽熱やバイオマス、地中熱などの再生可能エネルギーを活用した施設園芸による生産を考えています。将来的には、放射線量の減衰が前提ですが、施設内で段階的にトマトやイチゴなど付加価値の高い植物の栽培や販売を目指しています。さらに、地域交流や体験学習、農業機械の共同利用を兼ねた施設を立地して、復興に関する情報の発信も行っていきたい考えです。
【課題】園芸施設などの設備費、農作物の栽培指導と販路の開拓、隣接する復興記念公園と連携したプロジェクトの実現などが主な課題で、これらへの対応と支援が必要です。JA、金融機関、行政などと連携する一方、担い手の発掘も求められます。また、農業技術関連の開発やメンテナンス企業の誘致も必要です。
出典:双葉町
これらの3拠点を形成する全体のスケジュールを図4に示しますが、2016年度は各拠点の計画策定と設計を行い、2017年度以降は事業開始に向けて造成工事などを行っていく計画です。農地を活用した事業を推進していくためには、地権者の人たちが納得する形で、意欲のある担い手と一体となって、行政などの支援を受けながら営農再開をしていかなければなりません。現在は、営農再開に向けて、地権者や行政などステークホルダー間で話し合う初期段階にあると思われますが、両竹・浜野地区でのモデル事業構築の試みが前進していくことにより、将来、町内の他の地区へ展開していくことが期待されます。
双葉町を何度か訪ね、町民の皆さんと意見を交わし、私自身、この町の復興を支えていきたいという思いを強くしています。試行錯誤しながらでも町の復興を目指して、取り組みを加速させてほしいと願っています。