福島県双葉町の復興に向けたまちづくり
「荒廃した農地の再生モデル」
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
町民との議論
「新産業創出分科会」と「再生可能エネルギー活用・推進プロジェクト勉強会」を昨年各3回ずつ開催し、県内の先進事例(再生可能エネルギー活用施設、植物工場等)の視察を行いました。分科会と勉強会には、再生可能エネルギーに関心のある町民の方々、オブザーバーとして産業界や学界の有識者、福島県などの行政機関担当者が参加しました。両竹・浜野地区を「再生可能エネルギー・農業再生モデルゾーン」として発展させるためにはどうすればよいか、町民の皆さんが事業に参画できることを前提として考えていくことにしました。
分科会では、まず事業イメージを整理するため、「町内で利用できる再生可能エネルギーは何か」を考えました。有識者からの意見もいただき、双葉町で活用できる再生可能エネルギーは、太陽光、太陽熱、風力、地中熱、稲わらや資源作物などのバイオマスであることを確認しました。続いて、「再生可能エネルギーと農業をどう発展的な関係に結び付けるか」について、「経済性(採算性)はどうか」「農地をどう活用するか」など、さまざまな観点から話し合いました。その結果、新しい農業・新しい産業として、先端技術を活用した施設園芸や農業の六次産業化を積極的に推進していく考えを共有しました。(図3)
再生可能エネルギーを活用して創出した電気や熱を地域の農業施設などで活用し、さらに他地区の施設にも融通するなど、エネルギーの地産地消を目指す方向性も共有しました。また、町民の皆さんがどう事業に関わっていくかが重要なポイントですが、農業者を組織化して、復興組合や農業生産法人などの構成員として参画してもらう仕組みを作ることにしました。地域外からのサポーターをどんどんつくっていきたいという声もあり、再生可能エネルギー発電事業に市民ファンドを導入し、いろいろな人たちにも出資してもらう仕組みも盛り込むことにしました。
「再生可能エネルギー・農業再生モデルゾーン」に3つの拠点をつくる
「再生可能エネルギー・農業政策モデルゾーン」を具体化するため、3つの拠点「再エネ発電拠点」「次世代園芸チャレンジ拠点」「水田再生活用拠点」を整備することにしました。「再エネ活用」「農地(水田)の活用」「新しい産業の創出」を一体化し、1つのモデルとしました。再生可能エネルギーを活かした新しい農業、新しい産業創出を行い、農業再生を通じて原風景を回復するのが究極的な目標です。3つの拠点のそれぞれの特徴は次の通りです。
①再エネ発電拠点(約22ヘクタール)
耕地が未整備など、効率的な営農が将来にわたって困難な農地は、メガソーラー(大規模太陽光発電設備)など再生可能エネルギーの拠点として活用することを目指します。発電施設の保守管理や草刈りなどで地元に雇用の機会が生まれます。
【課題】電力系統への接続能力増強、送電設備にかかる費用の低減、地域の再生可能エネルギー事業への参画などが主な課題で、これらへの対応と支援が必要です。優先的な接続枠を確保するなどの対策を町として求めています。
出典:双葉町