改正FIT法の見直しのポイントは?
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
(3)地熱等のリードタイムの長い電源の導入拡大
地熱や風力、中小水力、バイオマスといったリードタイムの長い電源は、事業化を決定した後も、適用される買取価格が決定していないリスクを負いながら、環境アセスメントなどの事業プロセスを行わなくてはなりませんでした。そのため、導入が思うように進まなかったことを踏まえ、改正法では、数年先の認定案件の買取価格まであらかじめ提示することを可能とし、事業の予見可能性を高めました。これにより事業化決定のリスクを低減されるため、事業者の参入を促すことになることが期待されています。(図6)また、太陽光以外のリードタイムの長い4電源については、通常3~4年かかるとされる環境アセスメントの手続き期間の半減を目指し、自治体による支援を強化していく方針です。
(4)電力システム改革を活かした導入拡大
また、電力システム改革を活かして、再エネの導入拡大を図る取り組みを推進していきます。小売事業者が自己の需要家のために必要な再生可能エネルギーを買い取る、という現行の制度のままでは、エリア全体の需給状況にあわせて火力発電や揚水発電所の活用や広域融通を柔軟に行うことは困難です。(今年6月16日時点で経済産業省に登録済みの小売事業者は311社ある)
そのため、系統運用に責任を持つ送配電事業者がFIT電気を買い取り、卸電力市場を通じて供給する仕組みに変更することで、効率的な系統運用やFIT電気の広域的な活用の促進を行っていくとしています。(図7)また、市場を経由しなくても、小売電気事業者への直接引き渡しもできるようにします。
ポストFITの議論も始まる
FIT制度はずっと続くものではありません。再生可能エネルギー市場への新規参入を促すインセンティブ政策であり、いずれ終わるものです。もともと“試行錯誤”で始まった日本のFITですが、予想を超えた太陽光発電市場の急拡大により“太陽光バブル“が起き、系統接続や賦課金増大などの問題が生じました。これらの問題に対応するため、現在すでにポストFITに向けた議論が進められています。
FITによる賦課金という国民負担を発生させないのが、エネルギー自家消費型のエネルギーシステムの構築、つまり太陽光発電やバイオマス発電、蓄電池などの分散型電源を各地に広げていくことです。今後、日本は分散型電源と大規模集中型電源を協調させて需給のバランスを取るエネルギーシステムを構築していく方向になるでしょう。
なお、改正FIT法により大きな転機を迎える太陽光発電の今後については、月刊「エネコ」で連載中の「松本真由美の環境・エネルギーDiary」8月号で書きます。8月1日以降、当研究所のホームページに記事を転載する予定ですので、よろしければそちらも合わせてお読みください。