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温暖化国際交渉の本質と日本の取るべき戦略

~ 世界に誇る日本の技術力と経験を生かし、世界全体の排出量削減に貢献を~


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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 経済活動や生産量の見通しを立て、さまざまな対策による効果を織り込んで自主的に目標を策定し、その達成状況について産業団体内部でのピアレビューや政府の組織する専門家会合で評価を行うというPDCAサイクルを確立することにより、自主行動計画に参加する産業・エネルギー転換部門34業種のCO2排出量は、08~ 12年度の5年間平均で1990年度比12.1%減を達成した

20151014

 オイルショック後の省エネの進展で、「乾いた雑巾」と表現される日本の産業界が自主的に取り組み、ここまでの削減を達成したことは、海外の温暖化問題関係者にも驚きを持って評価されている。この知見を提供し、今後の国際枠組みが実効性あるものになるよう協力していくことは、日本にしかできない貢献だといえる。
 また、我が国の温室効果ガス排出量は世界全体の2.6%に過ぎない。国内排出量の削減に身を削るよりも、その技術力で世界全体の排出量の削減に貢献する努力こそすべきである。地球温暖化問題はグローバルな問題であり、日本国内での削減も海外での削減も温暖化防止効果という点では等価であるからだ。
 13年11月に安倍首相が提唱した「美しい星への行動(ACE:Action for Cool Earth)」は①革新的技術開発の促進によるイノベーション②日本が強みとする低炭素技術を国際的に普及するアプリケーション③脆弱国を支援し、日本と途上国のWin-Win関係を構築するパートナーシップ――を三つの柱とする。技術を中核とした日本ならではの戦略であり、その強力な推進が望まれる。たとえば、日本の最新鋭の石炭火力燃焼技術で米国、中国、インドの既存の石炭火力発電所を置き換えれば、13億トン、即ち日本の年間温室効果ガス総排出量に相当する規模の排出削減が可能だという試算もある。
 日本政府が取り組んでいる二国間クレジットメカニズム(JCM)も、日本の優れた環境エネルギー技術の海外への普及を加速し、途上国の排出削減への貢献度を定量化するという試みとして重要である。
 現在、日本政府は国連交渉の場で、JCM制度によって定量化された排出削減分を日本とホスト国で分配し、それぞれの国内削減分に加えることを目指しているが、それが国連の新枠組みの中で認められるか否かは予断を許さない。新枠組みにおいては自らも削減目標を掲げることになる途上国が、自国の削減成果の一部を他国に譲渡するような国際オフセットに消極的になる(自国の削減量として確保したがる)ことも想定されるからだ。
 そうした状況を踏まえると、JCMパートナー国が自らの温室効果ガス排出削減状況を国連に報告する際には、JCMプロジェクトによる削減量にかかわらず、実際の排出(削減)量を報告してもらい、一方でJCMプロジェクトに基づく削減量については「日本の技術貢献による削減量」として明示してもらう。そうしたJCM削減量の総和を日本の「国際貢献削減量」として国連に報告するという仕組みも追求すべきである。
 また、低炭素技術の普及にあたっては、原理主義にとらわれない現実的な対応をすべきである。欧米諸国はCCS(炭素貯留隔離)を装備しない限り、効率の如何を問わず石炭火力発電所に対する多国間開発金融機関の融資を禁止することを唱導しているが、高コストのCCSの装備を融資条件にすることは、高効率石炭火力への融資を事実上禁止するに等しい。しかし、途上国における今後の電力需要の増大、潤沢かつ安価な石炭資源の存在を考えれば、今後も石炭火力発電所の建設は続けられるだろう。
 多国間開発金融機関が高効率石炭火力への融資を止めれば、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)やBRICS銀行等からの資金により、中国の低効率な石炭火力技術を用いた発電所建設ラッシュを招くのみである。世界最高水準の効率を誇る我が国の石炭火力技術の普及により、世界での削減に貢献できるという事実を丁寧に説明する必要がある。
 また、インドなどは省エネ技術に関する知的財産権(IPR)が低炭素技術移転の障害になっているとして無償提供すべきと主張しているが、IPRの適切な保護がなければ企業の研究開発意欲は維持できるものではない。IPRを適切に保護し、ビジネスベースで省エネ技術の開発と移転が促進される仕組みの構築を主導すべきである。
 長期の問題である地球温暖化に対応する上で、既存技術の普及だけでは不十分であり、CCS、バッテリー、次世代原子炉から宇宙太陽光、人口光合成など、長期的な排出パスを大きく変えるような革新的技術開発が不可欠である。
 技術大国・日本としては重点技術の選定、R&D(研究開発)予算の確保、技術ロードマップの作成、国際共同研究開発などの国際イニシアティブを積極的に提唱していくべきだ。我が国が「エネルギー環境技術のためのダボス会議」として主導するICEF(Innovation for Cool Earth Forum)は、世界の産学官の英知を結集するプラットフォームとして大きな役割を果たし得る。また、来年のG7議長国となる機会をとらえ、先進各国がエネルギー・環境技術のR&Dに率先して取り組むというメッセージを発信すべきである。

まとめ

 国際交渉に関する我が国のメディア報道は、ともすると孤立すること自体が悪と論じがちであるが、本当の国益・地球益に貢献する道は何かを探るべきである。国連は交渉の場の一つに過ぎず、二国間協力、産業団体ベースでの協力など、さまざまなパートナーシップ、実効性ある気候変動対策の場は存在する。COP21では、すべての主要排出国が参加しない枠組みには不参加も辞さないという覚悟で交渉に臨むことが重要である。
 また、国内の施策としては、抜本的な温室効果ガス削減につながる革新的技術開発を促すことが重要であり、再エネの固定価格買い取り制度のような既存技術の普及支援とのコストバランスの見直しが求められるほか、削減目標の達成にあたっては民間の温室効果ガス削減に向けた自主的・主体的な取り組みを後押しする政策が求められる。
 気候変動問題をイメージで語ることは卒業し、実効性ある気候変動対策に貢献することこそが、現在の日本に求められている。
 詳細は、ぜひNPO法人国際環境経済研究所の澤昭裕所長および3名の研究員が連名で発行した緊急提言「COP21 国際交渉・国内対策はどうあるべきか」をご覧いただきたい(http://ieei.or.jp/2015/10/sawa-akihiro-blog15100802/)。

経団連環境自主行動計画〈温暖化対策編〉総括評価報告
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/102_honbun.pdf

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