「核のごみ」最終処分 原発に恩恵受けた現世代が政治的意思を示せ
澤 昭裕
国際環境経済研究所前所長
そもそも一旦処分作業をし始めれば、新たな技術開発に誰がどの程度の規模で投資を行うインセンティブを持つのか。暫定保管を最初から織り込んでしまえば、その保管期間が終了するまでの間の世代が、どうして政治的に難しい処分地選定を一生懸命やると考えることが可能なのか? そもそも暫定保管を決めた世代が、そうした政治的な困難を乗り越えることを諦めたがゆえに、「暫定保管」という概念に甘えただけではないのか。
そうした点を考慮して、国際的には回収可能性を認めることには相当慎重な意見が多い。上記の諸機関での検討に当たっては、こうした批判を未来世代から受ける可能性を十分に議論したのだろうか、疑問である(そもそも、メディアは「学術会議」をアカデミア全体の代表組織のように報道することが多いが、専門的な学術的検討を行う場=学会ではなく、政治的・社会的存在としては、ある種のアドボカシー団体のように機能する場合もあることに留意する必要がある)。
適地選定プロセスの加速化が必要
もう一つの「科学的に有望な地域」を国が選定して示すという点についてだが、これは数年前に高知県の東洋町が調査対象として名乗り出た際、地元で政治的に大きな問題となり、最終的にその当時の町長が選挙で破れるということがあったことを受けて、これまでの自治体の主体性に配慮した「公募方式」では、政治的リスクが大きすぎて物事が前に進まないという反省に立った方針転換だ。
ただ、科学的有望地は、実際には1億年は動いていない地層は日本には多くあり、火山や活断層も避けることは段階的調査を行う中で可能となるため、相当の幅広い範囲になることが見込まれる。実際には、そこから絞り込んでいくことが求められるわけだが、そのプロセスにおいてはやはり公募方式でもあった政治的リスクが生じることは避けえない。
結局、原子力発電による電気によって恩恵を被ってきた現世代が、腰を据えて最終処分地選定に向けてのプロセスを断固として進めるのだという強い政治的意思が、政権及び政権与党に必要とされるのである。地層処分についての正しい知識の説明、科学的な情報の頒布など基礎情報を、これまで以上に国民に伝える努力を行うとともに、処分地選定プロセスを一歩一歩進めていくことが重要だ。適地選定までには、3段階の法定調査(概要、精密、詳細実証)を経る必要があり(20年程度)、そのうえ操業開始までの施設建設にはさらに10年程度は見込まれている。それゆえ、明日明後日の問題ではないにせよ、これまで後回しにしてきたこのプロセスを加速的に進めること、これは待ったなしである。