クリーンパワープランの行方
来年の米大統領選候補者たちの気候変動対策は?
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
共和党は気候変動政策に重点を置かない候補者がほとんどだが、米ヒューレット・パッカードの前CEO(最高責任者)のカーリー・フィオリーナ氏は、地球温暖化という現実問題に対峙すべきであるとのスタンスを表明している。共和党の指名獲得をめざす候補者の中では唯一の女性である。フィオリーナ氏の選挙キャンペーン・ビデオの冒頭に民主党のヒラリー・クリントン氏を登場させて、ヒラリー氏の手腕を批判するなど、女性同士の対決を意識するかのようなキャンペーンを展開している。
フィオリーナ氏は、「気候変動問題を解決するためには、規制ではなく、イノベーションが重要だ」と発言している。「地球温暖化は、人間活動が大きな原因となっているのは多くの科学者が認め、国際的な合意もされていることだ」と述べる一方、「中国やインドが二酸化炭素(CO2)の排出削減をせず、地球全体の温室効果ガスの排出が増加するならば、米国一国が排出削減の努力をしても大きな違いはない」として、「気候変動問題を解決するためには、地球全体で何十年もかけて、莫大なコストをかけて真剣に対峙していく必要がある」と述べている。やはり民主党の候補者と比べると、気候変動政策において米国が世界を主導していくという姿勢はうかがえない。
来年の米国の大統領選挙で最終的に誰が大統領に選出されるのだろうか。現在のところ、民主党有力候補のクリントン氏はメール問題などスキャンダルが噴出し、人気に陰りが見られる。一方、共和党はトランプ氏が数々の失言にもかかわらず支持率をリードしているが、気候変動政策については、真剣に取り組む姿勢はこれまでの発言からもうかがえない。
来年の大統領選の行方は今のところ先が読めないが、もし共和党から大統領が誕生した場合は、米国の気候変動政策、およびクリーンパワープランは後戻りする可能性がある。そうした懸念を払しょくするように、EPA(環境保護局)のジーナ・マッカーシー長官は、政権交代してもクリーンパワープランを、断固たる覚悟で進めていくことを表明している。