クリーンパワープランの行方

来年の米大統領選候補者たちの気候変動対策は?


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

印刷用ページ

 その他、民主党候補のバーニー・サンダーズ上院議員(バーモント州選出・無所属議員)は、上院では最もリベラルな議員の一人で環境派として知られているが、サンダーズ陣営は気候変動政策を最重要課題として捉える構えである。化石燃料に大きく依存する現在から、クリーンエネルギー社会へ移行するために、米国は世界の中で中心的役割を果たすべきだと主張している。

画像2

バーニー・サンダーズ上院議員、自身の選挙キャンペーンHPより

気候変動政策に懐疑的な共和党候補者

 一方、共和党のほとんどの候補者は地球温暖化の人為起源説には懐疑的で、気候変動問題を差し迫った問題として捉えておらず、気候変動政策にはあまり乗り気でない発言が多い。

 共和党有力候補、不動産とカジノ経営を手掛けるドナルド・トランプ氏は、地球温暖化は“でっち上げ(hoax)”だとして、気候変動対策は米国の製造業の競争力を削ぐものだと述べ、オバマ政権について、「失敗したクリーンエネルギープロジェクトに数百億ドルものお金を浪費した」と強く批判している。

 トランプ氏は歯に衣きせぬ発言をする人物として知られるが、6月中旬に大統領選への出馬を表明してから、幾度かの問題発言がメディアで報道されて、度々批判されている。しかし、不思議なことに共和党の有権者の人気は高く、トランプ氏は、来年の米大統領選に向けた共和党の指名争いでトップを走っている。トランプ氏が予備選を本気で戦う気があるのか、冷ややかに見るメディアは少なくないが、ロイター通信によると、8月6日のTV討論会の後でも他の共和党候補者を大きく引き離し、トップの支持率を維持している。意外なほどのトランプ人気に、案外このまま戦い続ける可能性もあると思わされる。

画像4

ドナルド・トランプ氏、自身の選挙キャンペーンHPより

 続いて、1999年から2007年までフロリダ州知事を務めたジェブ・ブッシュ氏は、父はジョージ・H・W・ブッシュ元大統領、兄はジョージ・W・ブッシュ前大統領というサラブレッドの政治家一家の出である。ブッシュ氏は、気候に変化が生じているのは認める一方、それが人為起源であるのか判断しかねると言い、気候変動政策へのスタンスは今のところはっきり打ち出していない。「地球温暖化の何%が人為起源で、何%が自然発生したものなのか、科学がはっきり証明しているわけではない」と今年5月、CNNニュースのインタビューに答えている。

 兄のジョージ・ブッシュ前大統領が在任中も、気候変動問題は重要課題として位置付けられなかったが、ジェブ・ブッシュ氏も気候変動政策は最優先事項ではないと述べている。オバマ政権のように多額のコストを気候変動政策にかけているのは行き過ぎであり、経済性を考慮し、その他の重要政策とのコストバランスを考慮すべきだという考えだ。