化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉(その7)
化石燃料代替の再エネの利用では経済成長は不可能である
久保田 宏
東京工業大学名誉教授
表7-1 再エネ電力種類別の「有効再エネ利用比率」の試算結果
(資源エネルギー庁によるFIT制度の認定に際して用いられている再エネ電力設備の実用化の
操作条件や諸定数を用いて試算した結果。計算方法は文献7-5参照、ただし、数値に訂正を加えた)
注:
*1;「有効再エネ利用比率i」の略、
*2;同上、再エネ設備の製造、使用に再エネ電力のみを用いた場合のi の値
*3;太陽光、風力で蓄電設備を考慮した場合の「有効再エネ利用比率i 」の値
*4;同上、再エネ電力のみに依存する場合のio の値
注:
- *1;
- 再エネ電力生産分が発電用の化石燃料の輸入金額が節減でき、その金額を国の補助金として、事業者に交付できるとしたときの「限界設備価格」Lの略.。設備コストT の最小値と最大値に対して計算した。ただし、現行の化石燃料(石炭)主体の市販電力の単位発電量あたりの化石燃料輸入燃料CIF 価格を6.53円/kWh とした。
- *2;
- 政府の決めたFIT 制度での設備建設コストT 、設備建設費に設備維持費{(年間設備維持費)×(使用年数Y)}を加算して求めた値、設備規模の最大と最小に対する値を示した。
注:
- *1;
- 各再エネ電力種類別の導入ポテンシャルの値の国内合計発電量(2010 年度)1,156,888百万kWhに対する比率
「補遺7-1」;再エネ電力の化石燃料による火力発電代替利用の評価指標について
「有効再エネ利用比率i」;再エネ電力による産出エネルギー(資源量としての一次エネルギー換算値)から、この産出電力の生産に必要な人件費を含めた一次エネルギー消費量を差し引いた(社会エネルギー)の値を、産出エネルギーの値で割った値。在来の化石燃料による火力発電では、このiの値が95%以上なので、その代替での再エネ電力の利用でもiの値が90%以上あることが望ましい。
「限界設備価格」;化石燃料代替の再エネ発電では、この再エネ発電設備の製造・使用に要する金額を、その設備の使用期間(寿命)中の発電量の販売金額(化石燃料使用電力の販売価格)で回収する必要がある。これを可能とする設備の製造・使用の金額を、化石燃料代替の発電設備の限界価格として、再エネ電力が化石燃料による火力発電に代替利用できる条件とする。
「導入ポテンシャル」;限られた国土面積のなかで単位面積当たりの発電量に大きな制約のある再エネ電力を導入するには、再エネ電力の種類別の導入可能(ポテンシャル)量を定量的に把握する必要がある。
- 7-1.
- 日本エネルギー経済研究所編;「EDMC/エネルギー・経済統計要覧2013年版」、省エネルギーセンター、2014 年
- 7-2.
- 久保田 宏、松田 智;幻想のバイオ燃料、科学技術的見地から地球環境保全対策を斬る、日刊工業新聞社、2009年
- 7-3.
- 久保田 宏、松田 智;幻想のバイオマスエネルギー――科学技術の視点から森林バイオマス利用の在り方を探る、日刊工業新聞社、2010年
- 7-4.
- 久保田 宏、中村 元、松田 智;林業の創生と震災からの復興、日本林業調査会、2013年
- 7-5.
- 久保田 宏;科学技術の視点から原発に依存しないエネルギー政策を創る、日刊工業新聞社、2012年