病院と原発事故(その4)
越智 小枝
相馬中央病院 非常勤医師/東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座 講師
つまり、地域の「医療支援」「病院支援」は、長期的、かつ、様々な人員の支援が大切であることがわかります。この支援がどのくらい長期的に必要となるのか。これは、原発周辺地区の人口変動だけでなく、地元出身の医師・看護師がどれくらい輩出されるかにもかかっています。都心部などとは違い、地域の小病院・中病院においては、スタッフの多くが地元出身者だからです。相双地区では、双葉市にあった双葉看護学校が今も閉鎖中です。つまりまだ看護師数確保の目途はついていません。さらに先ほども述べたとおり、子供の人口減少により、教育レベルや進学率が下がるようなことがあれば、地元出身の有資格者の人数は減る一方でしょう。
このような状況は、医療の過疎化が進む日本の地方のありとあらゆるところで見られる現象でしょう。しかし、相双地区においては原発事故という突発的な出来事により、この社会問題が急速に悪化したことは明らかです。
そして未来へ
原発事故により、病院の受けた様々な影響について、述べてみました。このような事実につき、だから責任を取れ、という後ろ向きの議論をするつもりはありません。しかし、やはりエネルギー関係の方々の間には、「健康の維持」という認識がどうしても薄かったのではないか。そのような問題提起はするべきだと思っています。
病院は、特殊なサービス業ではありません。電気・水道や道路と同じく、人々の健康を守る社会インフラなのです。インフラの破たんはそのまま人々の命や健康にかかわります。そのような目から、地域を支える全ての職業の方に、健康インフラとしての病院を守ることを考えていただければと思います。
原発と病院。どちらも健康を守るために設立された社会インフラです。このような事故をきっかけに、お互いが協力をし合って地域の健康の為に尽くすことはできないことでしょうか。エネルギー関係者・医療関係者が互いに知恵を持ち寄って、より災害に強い街を作れれば、と願っています。