温暖化の政策科学
家庭・業務部門では更に強固な「鉄のリンク」
-経済が成長するならば電力需要も伸びる-
杉山 大志
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
要約
経済が成長するならば、電力需要もそれを上回って伸びるという「鉄のリンク」について、一般的には前回、詳しく議論した。
今回は、これへの補足として、特に民生部門(家庭部門および業務部門)において、「鉄のリンク」がより強固であることを、グラフで示す。
図1、図2に示すように、過去、電力需要の伸び率は、GDP(実質)の成長率を上回ってきた。
前回は日本全体の電力需要についての図を示したが、今回改めて家庭・業務部門に注目すると、なお一層、鉄のリンクが強固であったことが分かる。石油ショックの時期においてすら、電力需要の伸びはGDPの伸びをおおむね上回っていたことが注目される。
もしも、この「鉄のリンク」を軽視して、家庭・業務部門の電力需要があまり伸びないと想定するならば、京都議定書目標達成計画と同様の失敗をすることになる。
現在政府で検討している長期エネルギー需給見通しでは、この轍を踏まないよう、経済成長率の想定と整合性のある家庭・業務部門の電力需要見通しを作成する必要がある。
- 注1)
- ここでは政府の公式の統計である総合エネルギー統計に依拠したが、1990年以前については総合エネルギー統計のデータ改訂がなされていないので、EDMC2014を使用した。なおEDMC2014の業務部門電力消費量は総合エネルギー統計よりも2005年以降に数値が小さくなるという食い違いがある。EDMC2014を用いると図2はやや変更を受けるが、1.5%~2%以上の経済成長の時には、鉄のリンクがおおむね成立することが確認できる。
- <引用文献>
- ・
- 総合エネルギー統計:http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/
- ・
- EDMC(2014):EDMCエネルギー経済統計要覧、(一財)省エネルギーセンター/日本エネルギー経済研究所