投票で決めよう、「地球温暖化は本当か?」-エネルギー・温暖化関連報道の虚実(12)
澤 昭裕
国際環境経済研究所前所長
最近、米国上院で、日本の国会では考えられないような投票が行われました。
それは「気候変動は本当か」「その原因は人間の活動によるのか」という問についてyesかnoかを問うものでした。(下のURL以外にも、たくさんの報道があります)
現在、オバマ大統領が、自分の「歴史的業績」(legacy)として、気候変動問題への取組みに熱心になっており、石炭火力発電への規制を強化するなど、これまで以上に世界の温暖化交渉をリードしようとしています。
これに対して、前回の中間選挙で勝利した共和党には気候変動否定論者(deniers)が多いと言われ、特にその代表格だったオクラホマ州のJames Infohe上院議員が上院環境委員長に就いたことから、行政府と議会の対立が予想される状況になっていました。
そうした中、カナダから原油を運ぶパイプライン(Keystone XL pipeline)を認めるかどうかに関連した法案審議の過程で投票が行われたのが、冒頭に述べた決議案です。
いろいろ議員間の駆け引きなどがあったようですが、結論を見れば、98対1で「気候変動はreal であり、でっち上げ(hoax)ではない」となりました。
しかし、その原因が人間活動にあるという点については、関連した決議が二つありましたが二つとも小差で採択されず否定されたという結果となっています。
(なお、共和党議員の中の一定割合は、気候変動が人間活動による面もあるということに賛意を表したとのことです。)
皆さんも、科学的事実かどうかを投票で決めるということは奇異に感じられるでしょう。実際米国でも、そうした投票の意義に疑問を投げかける論評もあったようですが。
ただ、気候変動問題はそれだけ政治的問題でもあるということだと思います。気候変動問題に対応する政策措置は、概して経済活動抑制的なもの、(競争的というより)分配的なものとなりがちであり、その点で共和党と民主党の各々の根源的な思想・哲学に関係するものだからです。
日本でも、気候変動問題についての否定論者はいるものの、それは(気候変動問題を原子力推進のテコにしたくない強烈な反原発派以外には)研究者にとどまっており、政治的な場面ではそれほど強い否定論は見かけません。
なので、日本では、さすがにこうした国会決議案は出てこないと思いますが、国民投票を行ったとしたら、どうなるでしょう。皆さんはどちらに投票されますか?