【速報】米中が温暖化目標を発表 どうする日本


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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 さらに、「2025年までに05年比で26〜28%削減」という目標の裏付けが不明確である。実質的な裏付けのある削減目標を策定するには、産業界にヒアリング、あるいはコンサルテーションを行う必要がある。
 昨日の約束草案検討WGにも、日本鉄鋼連盟、日本化学工業協会、日本製紙連合会、セメント協会、電機・電子4団体、日本自動車工業会・日本自動車車体工業 会が招聘され、それぞれ「低炭素社会実行計画」のプレゼンテーションを行った。それぞれの技術の展開等によっていつまでにどれだけの削減が見通せるか は、産業界が最もよく理解しているところだからだ。もちろん、さらに高い目標を掲げていただけるよう、レビューを行うなどのフォローアップは必要であるし、これだけが国としての削減目標ではもちろんない。しかし、温室効果ガスが経済活動に伴って排出されるものである以上、産業界の見通しを把握するのは必 要なステップであろう。
 ところがこの夏、US Chamber of Commerce傘下のシンクタンクの方に伺ったところでは、産業界に対して政府から何らの照会もアクションもないとのことだった。シェールガス革命で自国に天然ガス を産出するようになり、石炭から天然ガスへのシフトが進んでいることを「温暖化対策」としてカウントする、あるいは、自動車燃費規制(CAFÉ)や省エネ 政策、電力に対する規制など個別の気候変動政策の組み合わせによるシュミレーションを行っている「らしい」ということであったが、その国の産業界や国民が 「政府が勝手に決めたこと」と冷ややかに見ている中で設定された目標にどれほどの実効性があるのか。

 日本政府に必要なのは、他国の数字ゲームに踊らされ、国内の議論を尽くさぬままに目標値を提出することではない。米中が実効性ある削減を行うよう交渉の努力を尽くすこと、そして、日本の技術が世界での削減に貢献できる枠組みを考えることであろう。
 特にこの共同声明の中で、交渉関係者をいたくがっかりさせたのが下記の文章だろう。赤字にした部分は、気候変動枠組み条約の交渉において念仏のように唱え られる「先進国と途上国の共通だが差異ある責任」の考え方で、これを盾にされると排出量の増大している新興国の巻き込みが困難になるので、先進国が 2020年以降の枠組みにおいてはこれを外すべきであるという交渉を重ねて、やっと2011年に開催されたCOP17において、それを認めさせたのだ。そ れがしっかり復活されていることは、米国政府にその考え方を問いただしてみるべきであろう。

2. To this end, President Barack Obama and President Xi Jinping reaffirmed the importance of strengthening bilateral cooperation on climate change and will work together, and with other countries, to adopt a protocol, another legal instrument or an agreed outcome with legal force under the Convention applicable to all Parties at the United Nations Climate Conference in Paris in 2015. They are committed to reaching an ambitious 2015 agreement that reflects the principle of common but differentiated responsibilities and respective capabilities, in light of different national circumstances.

 米国に騙されるのは京都議定書だけで十分であるし、政府に勝手な目標値を出されるのは民主党政権時代の1990年比マイナス25%だけで十分である。

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