蟷螂の斧

-河野太郎議員の電力システム改革論への疑問①-


国際環境経済研究所前所長

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 自民党河野太郎議員は、エネルギー・環境政策に大変精通されておられ、党内の会議のみならずメディアを通じても積極的にご意見を発信されている。自民党内でのエネルギー・環境政策の強力な論客であり、私自身もいつも啓発されることが多い。個人的にもいくつかの機会で討論させていただいたり、意見交換させていただいたりしており、そのたびに知的刺激や新しい見方に触れさせていただき感謝している。
 ただ、同議員のブログやさまざまなメディアでのご発言のなかには、誤った事実や情報が持ち込まれているのか、私などはそのご意見やご見解に疑問を感じてしまうこともある。しかし、同議員のその時の討論相手や聞き手があまり事情に通じていない場合、その場で反論したり、事実誤認を指摘したりすることができないまま、話が終わってしまっていることも多い。といって私自身が同議員とご一緒させていただく機会がそう多くあるわけでもなく、お忙しい同議員に(私が昔役人だった時代に行ったように)「ご説明」と言って会館をお訪ねするのもなかなか難しい。
 同議員は、他の議員には見られないような意欲を持ってずいぶん専門的な論点まで切り込んでいる点には常に敬服している。ただ、ブログのような一般向けのメディアだからなのか、「利権」「ボッタクリ」「言い訳」「暴挙」といった、不必要に強い言葉を使って自分の主張を展開されており、かつ、こういう部分に限って論旨が首肯しにくいものであったり、事実関係の調査が不十分であったりするのは極めて残念である。
 感情的なニュアンスを伴う言葉は、建設的・論理的な議論を阻害する。いったん「利権」とか「ボッタクリ」等の強い言葉でレッテル貼りをしてしまったら、普通は、レッテルを貼られた方は萎縮したり、説明しても分かってくれないだろうとハナからあきらめたりしてしまうものだ。特に、政権党内の政策通有力議員であればあるほど、反論することに躊躇してしまう人がほとんどだし、私もそのうちの一人だ。それに、こうしたレッテルを貼られた人たちや組織のモチベーションが下がれば、実際の問題解決にも影響しかねないという懸念が現実化する。
 このシリーズに「蟷螂の斧」と銘打ったのも、実力不足でかなわないとは分かっていても挑んでいく姿勢を表して、自分自身を鼓舞しているわけだが、それ以上に問題の更なる掘り下げを冷静な議論の中で行っていきたいという気持ちも強い。特に、電力システム改革論もさることながら、同議員の核燃料サイクル政策についてのご見識は非常に鋭い本質を突いておられる点が多く、今後の原子力政策をどう進めていくべきかという議論を前向きに行いたいと思っている。
 そこで、私のブログでこれから3回に亘って、同議員の電力システム改革についてのご発言やご見解に対して私がいだいた疑問や反論を綴っていこうと思う(核燃料サイクル政策については、別途の機会を考えている)。もちろん同議員に読んでいただきたい。しかし、それ以上にメディアやその他の会合の際に同議員の(以下に取り上げていく)ご発言やご見解に接した方々にも、ぜひご一読いただければありがたいと思っている。

 第一回は、電力自由化で家庭用電気料金はどうなるのかについて見てみよう。