英国で考えるエネルギー環境問題
英国と原子力(その1)
有馬 純
国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任教授
低炭素電源導入を促進するために電力市場改革法の一環として導入されることとなったのが、差額補填契約(CfD: Contract for Difference)である。その基本的な仕組みは下図の通りである。
CfDの仕組み
再生可能エネルギー、原子力を含む低炭素電源の発電事業者と政府との間でエネルギー源毎に購入価格に合意する(これをストライク・プライスと呼ぶ)。
ストライク・プライスが英国の電力市場で決まる市場価格を下回る場合には発電事業者がその差額分を受け取り、ストライク・プライスが市場価格を上回る場合には発電事業者がその差額分を払い戻す。差額分のコストは消費者の支払う電力料金の形で徴収される。天然ガス等、化石燃料のコストがよほど高騰しない限り、市場価格がストライク・プライスを上回ることは想定されないため、この制度はドイツで施行されている固定価格買取制度とほとんど同じものであると考えていいだろう。ストライク・プライスは原子力の場合、35年間、再生可能エネルギーの場合は15年間保証される。
次回はCfDにおける原子力の位置づけについて述べたい。