IPCC 第5 次評価報告書批判
-「科学的根拠を疑う」(その3)
第5次報告書の信頼性を失わせる海面水位上昇幅予測計算値の間違い
久保田 宏
東京工業大学名誉教授
世界の平均海面水位の上昇は、地上気温上昇と直接的な関係があると考えられるので、この図3-1に示す両者の関係は、CO2排出量の年次変化経路の違うRCPシナリオ別の影響を受けない一本の直線で表されるはずだと予想したが、そうはなっていない。特に不可解なのは、今世紀中頃(2045 ~ 2065 年)の値を示す直線群と今世紀末(2081 ~ 2100年)の値を示す直線群の両者が、それぞれについての気温上昇幅と海面水位上昇幅の大凡の関係を示すために描いた図中の二本の直線に見られるように大きくかけ離れていることである。
この第5次報告書の6年前に発表された第4次報告書にも今世紀末の(2090 ~ 2099 年)の同様のデータの記載があるので、これを表3-2に示すとともに、地上気温と海面水位のそれぞれの城主幅の予測値の関係を図3-2 に示した。
- 注 :
- *1 :
- シナリオ名は第4次報告書(文献3-2 )から
- *2 :
- カッコ内数値は最大値と最小値の算術平均値
図3-2 に見られるように、第4次報告書のデータについても、CO2排出シナリオ(第5次報告書とは異なったシナリオが用いられている)別の地上気温上昇幅と海面水位上昇幅の関係が、図3-1 に較べてシナリオ別の変異は少なく見える。しかし、ここで問題になるのは、この第4次報告書の今世紀末の同じ地上気温上昇幅の値に対する海面水位上昇幅の値が、図3-1に示す第5次報告書の今世紀末の値に比べて、大幅に小さい値をとることである。