2013年7月のアーカイブ
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2013/07/31
需要側のスマート化で計画停電を防げるか
2011年3月11日に発生した震災直後の計画停電と同年夏に実施された電力使用制限は、わが国の電力システムのあり方に疑問を投げかけ、今回の電力システム改革のきっかけとなった。2012年7月に政府が公表した「電力システム改革の基本方針」では「電力使用制限や計画停電などの強制措置ではなく、価格シグナルが働き、市場で需給が調整されるシステムへと転換する。」とされているが、その後の電力システム改革専門委員会ではむしろ発送電の法的分離が論点として大きく取り上げられ、計画停電など強制措置の回避策については、価格シグナルや市場の活用という以上に議論が深まることはなかった。 続きを読む
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2013/07/30
原発を止めたいと思うなら再生可能エネルギー導入を叫んではいけない
「今日」のエネルギー供給の問題と、化石燃料枯渇後を心配しなければならない「明日(将来)」のエネルギー供給の問題が峻別されなければならない
いま、日本のエネルギー問題を議論するときに非常に気になることがある。それは、原発事故の影響で国内の電力供給に一定の役割を果たしてきた原発電力が一時的に失われている「今日」の電力供給の問題と、化石燃料の枯渇が近くなり、その輸入価格の高騰が、この国の経済に影響を及ぼすようになってくる「明日(将来)」の問題とがごっちゃになってしまっていることである。 続きを読む
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2013/07/26
私的京都議定書始末記(その11)
-APEC、東アジアサミットでの議論-ハイリゲンダムサミットでは首脳声明の策定プロセスを直に見ることはできなかったが、2007年9月のAPECサミットと11月の東アジアサミットについては、首脳声明策定プロセスを体験することができた。 続きを読む
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2013/07/24
海外の太陽、風力エネルギー資源の利用拡大を図ろう(その2)
前回のコラムで、日本は、エネルギーの安定供給の確保と2050年に向けたCO2の大幅削減のため、再生可能エネルギーを大量に導入することが必要であり、そのためには海外の太陽、風力エネルギー資源の利用拡大を図らなければ、その実現は困難であることをご説明しました。 続きを読む
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2013/07/22
電力供給を支える現場力④
54の瞳 -中国電力 隠岐営業所27名が見守る電力設備-神々の宿る国島根の北東部に位置する島根半島から、約50km。4つの有人島と約180もの小さな島からなる隠岐諸島は日本海の荒波に浮かんでいる。島後島(隠岐の島町)、中ノ島(海士町)、西ノ島(西ノ島町)、知夫里島(知夫村)の4島合わせて約2万1千人(平成25年3月末現在)が生活する隠岐諸島への電力供給を担う、中国電力株式会社の隠岐営業所を訪ねた。 続きを読む
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2013/07/18
ガス事業法と電気事業法の決定的な違い
(霞が関政策総研Blog by 石川和男からの転載。)
資源エネルギー庁の中では、ガス事業法(昭和29年法律第51号)と電気事業法(昭和39年法律第170号)はよく並び称されるし、比較されることがある。エネ庁の電力・ガス事業部が両法を所管し、関連行政を担っている。それぞれの目次を見れば何となく法体系もよく似ていると思う人は多いだろう。 続きを読む
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2013/07/16
海外の太陽、風力エネルギー資源の利用拡大を図ろう(その1)
再生可能エネルギーの導入拡大に向けてさまざまな取組みが行われているが、これまでの取組みは十分なものといえるのだろうかというのが、今回、問題提起したいことです。そのポイントは以下のようになります。 続きを読む
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2013/07/12
私的京都議定書始末記(その10)
-気候変動戦線波高し-2007年前半、私がエネルギーマルチで「気候変動問題に関するエネルギー面からの取り組み」であくせくしている頃、本家本元の気候変動フロントでも色々な動きが生じていた。これには理由がある。京都議定書は2005年に発効し、2008年に第一約束期間が始まることが確定したが、第一約束期間は2012年末で切れる。 続きを読む
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2013/07/11
電力市場自由化で英国はついに節電の時代に突入
6月下旬にパリで開催されたEU-アジアのエネルギー・環境政策のシンポジウムに参加し、発表する機会があった。このシンポジウムは中国、インド、日本、シンガポール、EUの研究者10名ほどが参加し、各国のエネルギー政策を議論する大変有意義なものだった。その内容は、参加者の論文としてまとめられ、シンガポール大学が書籍として発行する予定なので、またご報告する機会があると思う。 続きを読む
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2013/07/10
2013年6月 ボン国連作業部会見聞録
「ドーハの悲劇?」復讐劇~COPプロセスの「終わりの始まり」6月3日~14日、ドイツ、ボンのMaritim Hotelで国連気候変動枠組み条約の特別作業部会が開かれ、11月にワルシャワで開催されるCOP19に向けて最後の事前交渉が行われた。筆者も経団連代表として6月11日から最後の3日間、参加してきたので、現地での見聞録を報告したい。なお、日本政府による交渉成果に関するまとめは外務省ホームページに詳しく報告されているのでご参照いただきたい。 続きを読む
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2013/07/08
知ってるようで知らない?PM2.5の本当の話。
今年のはじめ、日本のお隣である中国にて深刻な大気汚染が発生しました。このとき非常に高い濃度のPM2.5が観測されました。そのすぐあとに、日本でも一時的ではありましたが、PM2.5濃度が上昇したことから、PM2.5に関する関心が俄かに高まりました。 続きを読む
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2013/07/05
家庭用電力消費におけるプラグロードの増大
壁にあるコンセントに繋ぐ電気機器のことを米国ではプラグロード(プラグ負荷)と呼んでいる。米国のエネルギー情報局によると、2005年から2015年の間に、米国の家庭用電力消費はプラグロードの増加によって20%増えるだろうと予測されている。1978年には、プラグロードが家庭用電力消費に占める比率は17%だったが、2005年にはこれが31%とほぼ2倍に増大したのだった。 続きを読む
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2013/07/04
金融界の電気事業制度改革に対する懸念
電力各社の金融機能の低下は電気事業全体のリスクに直結する
電力自由化は、電気事業における制度担保がなくなることを意味する。欧米諸国の電気事業者の財務格付けは、自由化の前後で、国とほぼ同等の格付けから、経営環境や個社の財務状況を反映した格付けに改定された。その結果、大半の電気事業者が、財務諸比率が改善したにもかかわらず、財務格付けを引き下げられた。 続きを読む
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2013/07/02
私的京都議定書始末記(その9)
-<エネルギーマルチ>転戦記-各種のエネルギーマルチ(エネルギー分野の多国間会合)で省エネ、セクター別アプローチ、革新的技術開発のメッセージを盛り込むというミッションの皮切りは、2007年5月のIEA閣僚理事会だった。先進国26ヶ国で構成されるIEAは、先進国、途上国を問わず省エネを進めるべしというメッセージを打ち込む上で、最も合意を得やすい場であった。 続きを読む