GHGの真実-1

1990年の途上国の排出割合は本当に小さかったか?


新日鐵住金株式会社 環境部 地球環境対策室 主幹

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4.エネルギー起源CO2とGHG排出量で見た先進国・途上国の排出割合

(1)エネルギー起源CO2排出量の推移:2010年は、中・印二国でその他途上国を上回る
 図1にエネルギー起源CO2排出量の1990年(京都議定書基準年)と2010年の比較を示す。
 1990年、2010年のエネルギー起源CO2排出量は、それぞれ210億トン、303億トンで、20年間で約90億トン増加した。1990年の先進国の排出割合は65%で約2/3が先進国であった。このため、基準年においては、先進国を中心としたGHG削減が焦点となっていた。2010年には、先進国の排出割合は43%に低下し、途上国が半分以上を占めるようになっている。途上国の内訳では、中国、インドの2国だけで、その他途上国の排出量を上回っている。

(2)GHG排出量の推移:2010年では、その他途上国だけで世界排出の1/3以上を占める
 図2にGHGの1990年(京都議定書基準年)と2010年の比較を示す。1990年では、344億トンで、途上国の割合は、47%となり、エネルギー起源CO2よりもGHG、では途上国が大きな排出割合を占めることがわかる。これは、エネルギー起源CO2と比較するとその他途上国の排出割合が高いことに起因している。2010年は、495億トンで1990年からは約150億トン増加し、その内、エネルギー起源CO2以外のGHGは、60億トン増加している。先進国の割合は、35%に低下し、途上国の割合は、約2/3に達している。エネルギー起源CO2と比較すると、中国、インドの割合は、ほとんど変わらないが、その他途上国の割合は、27.5%から37.8%に増加している。GHGで見ると、その他途上国で世界の排出量の1/3以上を占めていることがわかる。これは、その他途上国においては、エネルギー起源CO2以外のGHG排出量の割合が多いことを示唆している。

5.GHG排出量で評価することの重要性

 IEAのCO2 emissions from fuel combustionに記載されているGHGデータを使用して、国別のGHG排出量を整理し、1990年と2010年の先進国と途上国の寄与を評価した。GHGで見ることでエネルギー起源CO2よりも途上国、特に中・印を除くその他の途上国の寄与が大きいことが判明した。GHG排出量で議論することにより、国際交渉においても途上国に責任を求める可能性が生じる。さらに、GHG排出量の内訳をより詳細に把握・理解することにより、GHG排出特性に応じた対策ができ、ひいては日本の様々な分野の技術により、その他の途上国の支援にも繋がるものと思われる。次報では、GHG排出量の内訳を整理し、GHG排出特性に応じた排出抑制対策について言及してみたい。

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