断熱の常識を超えた省エネ塗料“ガイナ”とは

環境技術事例&インタビュー


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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ガイナの導入コスト

――ガイナのコストについて伺えますか?

石子:1缶あたりの塗布面積は30~35㎡です。相手の材質によって、例えばコンクリート系のものは吸い込んでしまうので30㎡くらいです。金属のように吸い込まないものには35㎡くらい塗れます。

 初期コストとしては、材料費と施工費がかかります。しかし、ガイナを塗ることにより、冷暖房のランニングコストが下がっていきますから、コストは回収できます。今後日本は電気代・燃料費は上がっていくでしょう。ガイナの初期コストは、確実にリターンするスピードが速くなってきます。2010年度の電気代で計算した結果は、一般の住宅では、電気代のリターンでコスト回収に約8年かかりました。あと2年もすると、5年も経たないでペイできるようになると思います。事業用の倉庫やビルなどの大型の物件は大量のエネルギーを使います。こういう所は3~4年程度で投下した資本はペイできると思います。

 燃料費を削減することで、CO2排出量も下げることができます。30年のスパンで考えると、一般塗料では3回施工が入りますが、ガイナは耐久年数が長い。一般塗料より3割程度高いですが、3倍の耐久性があるので、長いスパンで考えるとコスト的なメリットがあります。本当に我が子はいい子に育ったと思っています。

今後の展開

――今後ガイナはどのような分野で応用されていくと期待をされていますか?この技術を応用した新たな商品開発の展望はありますか?

石子:建築分野だけではなくて産業全般に使えると思っています。最近普及が広がっているのは、老人福祉施設です。老人が元気に活発に活動できる手助けにガイナが選ばれています。

 薄膜で熱を止めることができる技術をこのガイナを通じて開発しました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)はH-Ⅱロケットの開発に際して、打ち上げ時の熱から機体などを守るためにロケット先端部に塗布する断熱技術を開発していますが、その宇宙技術を応用したのがガイナです。熱エネルギーを利用するあらゆる分野に有効ですので、ガイナの将来は無限大だと考えています。

――現在どれだけ出荷が出ていているのでしょうか?

石子:塗布している面積でお話した方がわかりやすいでしょう。20缶で屋根と壁を400㎡塗布できますが、今や年間約7万缶の出荷ですので、仮に1缶35㎡として245万㎡です。今年度はさらに50%アップの300万㎡まで拡大する見通しです。最近は世界各地から注文が来ていますので、今後さらに拡がっていくと思います。

【後記】

 塗るだけでさまざまな効果を発揮するガイナ。断熱、保温、遮熱、遮音、防音、空気質改善、防露・・とその効果は省エネ塗料という域をはるかに超えたものです。最近では筑波大学との研究で、ビニルクロス施工とガイナ塗装の空間で、安静時と運動時の代謝の計測を行い、ガイナ塗布空間での運動時の代謝がビニルクロスに比べて約25%上昇することがわかりました。ガイナ塗装の空間の方が下腿皮膚温度や直腸温度が高くなり、発汗量が多くなるためです。10年前までまったく売れなかったガイナが2012年省エネ塗料シェア16%で、3年連続のトップ。それも口コミで広がったガイナの後を、大手塗料メーカーが追随する形で省エネ塗料を開発していきました。中小企業のニッチな技術に、実はすごいものがある。ガイナの可能性は無限と石子社長が話されていましたが、常識を超えたところに意外な優れた発見が生まれるのだと驚きとともに深く感じ入りました。

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