電力改革、電力料金は下がるのか

アゴラチャンネル報告


Global Energy Policy Research

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原発は電力自由化と合わない

原子力について二人は当面必要という考えだ。しかし、その運営では長期のコスト回収、そしてさまざま法律や制度による下支えが必要になる。核廃棄物の管理も複雑だ。「自由化と原発は整合性が取りにくい。電力会社も嫌がるはずだ」と一致した。ところが、国の方針が原子力については不透明なままだ。

自民党への政権交代の中で、「すぐに原発を止める」という人の発言力は少なくなったように思える。ところが原子力を当面使う人の間では、考えがまちまちだ。推進するか、減らすか、減らすにしてもいつまでに行うかで、取るべき行動はまったく違う。「原発を巡るどんな政策をしても『仏つくって魂は入らず』ということになりがち。つまり人々の意思がまとまらないと、政策は効果が少なくなる。その上に国の方針が曖昧だと、さらに力がなくなるだろう」と、澤氏は危惧した。

目先の問題、規制委員会による混乱

澤氏は対談の日に、東京電力柏崎刈羽原子力発電所を地元に持つ新潟県柏崎市で講演をしてきた。「地元の意向は再稼動をしてほしいという声ばかりだった」という。現制度では、原発の稼動に合わせて交付金が地元自治体に入る。さらに原発の運営による関連産業への支出が、地元経済を潤す。いつ稼動されるか分からない現状で、地元では自治体、各企業が収入減に困り、そして先行き不安が広がっているという。

民主党の菅直人首相が2011年に原発事故後に介入して、法律に基づかずに原発を止めた。さらに12年秋に発足した原子力規制委員会が、新安全基準を今年7月に決める。それまで原発を動かさないという意向を規制委員会が法律に基づかないのに示したため、電力会社が動けない状況にある。さらに同委員会は原発敷地内の活断層の有無の認定を熱心に行う。活断層という一部に注目する政策は、多くの問題があることはこれまでGEPRで指摘してきた。(石川和男氏『原発停止継続、日本経済に打撃—活断層に偏重した安全規制は滑稽』)

「これも本当に大切なことから政策がずれている。エネルギー問題では全体像を考えるべきなのに、論点の一つにすぎない原発の是非にばかり関心が向く。そして原子力規制委員会は原発の安全を考える際に、考慮の対象の一つにすぎない活断層のみに注目する規制を進めている。規制委員会の役割は、原発の安全性を高め、稼動を適切に行うこと。ところが止めることが目的のようだ」と池田氏は批判した。

規制委員会は、新基準づくりで海外の事例を調べ、高額の機材の設置を電力会社に要求している。例えば、フランスのアレバ社しかつくれない一基当たり300億円近い「フィルター付きベント」の設置を、東日本に多い沸騰水型(BWR)の原子炉で義務づける意向だ。その設置には巨額のコストと数年の時間がかかりそうだ。

福島原発事故では、津波による安全確保用機材の損傷に加えて、人的、組織的な対応の未整備で、ソフト面の問題が被害を拡大した面がある。ところが規制委員会は、現場の意見を聞かずに高額な機材の整備というハード面ばかりに注目、その要求ばかりしている。「一連の規制委員会の行動は、逆に原発を安全にしないと、原子力工学の専門家が分析していた。現場の意見を聞かず、福島事故の教訓は事故原因の分析を反映していないためだ」(池田氏)。

また規制委員会のコミュニケーションの姿がおかしい。他省庁や政治家に情報を伝えず、電力会社との対話もない。「規制委員会が孤立している。ただし委員会を批判だけしても意味がない。適切な規制をするように方向を変えなければならない。そのためには政治が対話によって、経済面などの多様な論点を伝える必要がある」と指摘した。

澤氏は最後に提言をした。「国の方針がないと、原子力は方向が定まらない。政府各省庁がすくんでいる現状を考えると、政治のリーダーシップが必要な時だ。政権与党になった自民党は、同党の税調や、憲法調査会のような格の高い特別委員会をつくって、ここで議論を集約してはどうだろうか。原発だけではなく、医療などの科学技術利用、さらに国防への影響も検討する。政策が不明確なままだと、行政でも、企業でも、原子力に関係する現場の人々は、後でひっくり返ることを怖れて、先に進めない」と澤氏は言う。

エネルギーをめぐる問題は、さまざまな論点が重なり合う。そしてその制度設計の失敗は私たちの生活につながる。この対談で示されたように、「電力改革は、安く、安全で、安定的な電力供給を実現するために行われるべき」という目的を、決して見失ってはならないだろう。

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