再生可能エネルギー全量固定価格買取(FIT)制度の正しい理解のために
久保田 宏
東京工業大学名誉教授
自然エネルギーの種類別の(年間平均設備利用率)の値
各自然エネルギー種類別の(年間平均発電設備利用率)の値は、国内におけるエネルギー経済統計データ(文献3)には示されていない。それは、同じ太陽光や風力などの自然エネルギー電力が、設備立地の地理的・気象条件等、設置位置の地勢、さらには技術の進歩に伴うエネルギー変換効率の値などによっても大きく左右されるからである。したがって、国内平均値としても、それぞれのエネルギー源種類別に発電設備容量と発電量の実績値を基に ( 1 ) 式に基づいて算出する以外に方法がない。
エネルギー経済統計データ(文献 3 )では、新エネルギーとして、太陽光発電、風力発電、(廃棄物発電+バイオマス発電)の3種のそれぞれについて、導入量が(万kℓ)と(万kW)の値で与えられている。例えば、2009年の太陽光発電で、64.2万kℓと262.7万kWとある。この万kℓの値を石油(原油)換算kℓとして、その発熱量を9,126 kcal/ℓ、発電量変換係数を2,105 kcal/kWh(国内の火力発電の発電効率40.88 %(国内での基準値)に対する値)として発電量に換算すると2,802百万kWhと計算されるので、( 1 ) 式から、(年間平均設備利用率)の値は12.2 % と求められる。同様の計算を、風力発電と(廃棄物発電+バイオマス発電)についても行い、求められた(年間平均設備利用率)の値を表1に示した。ただし、(廃棄物;バイオマス発電)の発電量変換係数は2,600 kcal/kWh(発電効率30 %)とした。表1には、環境省の「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書」(文献4 )に与えられた各自然エネルギー源種類別設備の(年間平均設備利用率)の値についても示した。ただし、太陽光発電については、全国の非住宅用の設備容量と発電量の値から( 1 ) 式を用いて計算、風力発電では、陸上と洋上でそれぞれ風速別に与えられた設備利用率の値を用いて計算した。また、中小水力は65 %、地熱は70 % と与えてある値をそのまま用いたが、これらの出所は不明である。