COP18参戦記 day2 (12月3日 月曜日)
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
国連気候変動枠組み交渉の現場に久しぶりに訪れて驚いた事。紙の配布物が無い。
つい2年前、メキシコのカンクンで開催されたCOP16当時はまだ、交渉のスケジュールやドラフト案など「紙」が主体であり、朝会場に着くと同時にドキュメントセンターに突進して仲間の分も含めて配布物を確保するのが常だった。それが今や「Paper Smart」。スマートフォンやタブレットでバーコードを読んでその先にあるドキュメントを探しにいくか、通信機器がついていないPCしか持っていない人にはUSBで配布してくれる。国連事務局の運営は、少しずつスマートになっているようだ。
しかしながら交渉の中身はそうスマートにはなっていない。多くの途上国の主張は2年前とほぼ変わっていない。目をつむって聞いていると強いデジャヴに襲われ、自分が今どこにいるのかわからなくなるほどだ。「温暖化は先進国の責任で引き起こされたのだから、先進国が責任を負うべき。先進国は、自ら高い削減目標を掲げるのはもちろん、途上国が低炭素型成長を遂げられるよう技術的・資金的支援をすべき。それは気候変動枠組み条約に明記されている先進国の義務」。
その主張に道理が無い訳ではもちろんないが、現実に立ち返れば、先進国の中でどこにその負担に耐えうる経済状況の国があるのだろう。インドを始めとする途上国が今回のCOPでかなりこだわっているという知的財産権問題や技術移転。世界全体での排出削減が進むためには、先進国の産業界にとっても前向きに取り組める内容でなければ結局は持続可能かつ実効性ある仕組みにはならないことは、昨日のCOP18参戦記にも書いた通りである。今後の交渉が、その中身においてスマートになり、着実に前進する事を望む。