核燃料サイクル対策へのアプローチ


国際環境経済研究所前所長

印刷用ページ

5)高レベル放射性廃棄物の最終処分については、処分地を公募その他の方法で探索しつつも、学術会議の提言のように「暫定保管」(注)の概念を導入するという考え方も提示されている。しかし、この案は次世代に責任を押しつけることにもなりかねず、また、「回収可能性を備えるということは、一定期間の「管理」が必要となり、その分安全性や防御性に問題が生じるデメリットも大きい。

 こうしたことから、廃棄物を発生させた現世代の責任についてけじめをつけ、「管理」に伴う諸々のリスクを除去するために、エンドポイントとしての「地層処分」が最適な処分方法として選択されてきたことを忘れてはならない。歴史的に積み重ねられてきた議論や技術的な評価、そして国際的に検討されてきた結果(OECD/NEAやIAEA)を軽視することにもなりかねない。

 また、実際に地層処分を進めようとしている国もある中で、今後近い将来に地層処分以外の処分技術・方法にそれほど多くの資源を割くことは難しく、現実的には近い将来画期的な技術開発が出てくることを期待できない中で、「暫定保管」を進めることは、またしても結果的に問題の先送りになる可能性が高い。

注(「高レベル放射性廃棄物の処分について」平成24年9月日本学術会議より)

:暫定保管(暫定責任保管)
高レベル放射性廃棄物を、一定の暫定的期間に限って、その後のより長期的機関における責任ある対処方法を検討し決定する時間を確保しつつ、回収可能性を備えた形で、安全性に厳重な配慮をしつつ保管することを意味する。

6)ただ、一方で、これまで地層処分の必要性や安全性についての一般的理解が進んでいるかと言えば、疑問なしとしないし、他の技術について基礎研究を続けていくことの意義も小さくないことも事実である。高速炉や消滅処理など、廃棄物の処分や取り扱いをより容易にするための研究開発にも投資しながら、同時に、福島原発の事故以降原子力技術に懸念が急速に高まった一般国民の関心を喚起する形で、現時点における最適な処分方法としての地層処分についての意義づけを行っていくことが必要である。

第三のアプローチ「国際的枠組みの構築とゼロからの再検討」

 第三のアプローチは、この際すべての制約要因を白地から問い直すことである。特に、核燃料サイクルの国際的な枠組み構築を構想する中で、これまでの制約を緩和する方策を考えることになろう。

 特に、今後成長する発展途上国でのエネルギー確保にとって、原発がますます重要な選択肢になっていく中で、廃棄物の処分の問題や燃料供給の安定性の問題などは、各国の大きな課題となる。これまでのように、こうした問題は先進国だけにとどまらないのであり、既存の制度的枠組みについての再検討が行われる必要があろう。

 例えば、日本は、これまでの実績をもとに、核不拡散上の課題に関して、東アジアにおける保障措置実施のための規制や体制づくりに、重要な貢献を行っていける能力を有している。こうした日本の実績を背景に、六ヶ所再処理工場(第二も含む)の事業を国際的に展開することを構想することは可能だろう。

 その際過激な方法になるかもしれないが、使用済み核燃料の国際間移動を円滑化するような国際条約を構想し、廃棄物は発生した国内で処理をするという原則のバーゼル条約と違背しない範囲で、核燃料の供給、発電、再処理を国際的に構築することはどうだろうか。

 さらに、地層的に適地が限定されるうえ、対テロなどに強力な防御性を備えなければならないような放射性廃棄物の処分施設は、どの国でも可能というわけではない。その意味で他の産業廃棄物とは別の国際的な枠組みを検討していくことも、将来の課題とすべきだろう。