2012年7月のアーカイブ
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2012/07/30
「経済か命か」は誤った二分法
— 経済と命の相関に着目をすべし —政府のエネルギー・環境会議が2030年を見据えたエネルギー政策を検討すべく国民的議論を求めている。国民の意見が直接的に政策に反映されないことを不満とする意見もあるが、最終的にエネルギー政策がどのようになるにせよ、議論を通じてその選択によって得られるものと失うものが意識されることにこそ意味がある。むしろ国民各層が主体的に考える経験を共有するための貴重な機会として前向きに捉えたい。 続きを読む
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2012/07/28
ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ③
前々回①では、
・ドイツの電源計画が自国で産出する褐炭(石炭の中でも品質の悪いもの)を主に、化石燃料を中心とする構成になっていること。
・北部に大量導入した風力発電による電力を消費地である南部に届ける送電線の建設が遅れていること。その不安定な電源が流入する近隣国から苦情が出ていること。 続きを読む -
2012/07/27
エネルギー政策における「エネルギー源のベストミックス」
その中に、当面、自然エネルギーは入ってこないエネルギーの「ベストミックス」とは、エネルギー政策におけるエネルギー源の多様化の中でのベストな選択の比率とされている。いま、原発事故後のエネルギー政策の見直しで中心的な課題となっている原発電力比率の選択の問題で、政府の提示する2030年時点における原発比率の3種の選択肢案についても、表1に示すように、各原発比率の値に対して、自然エネルギーの比率、および残りの火力発電の比率の目標値が与えられている。 続きを読む
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2012/07/25
「エネルギー・環境に関する選択肢」は何を国民に問いかけているのだろうか?
「エネルギー・環境に関する選択肢」についての国民的議論が始まっています。今のところ、どの選択肢を選ぶかということや、意見聴取会への参加者の所属の問題などに関心が集まっていますが、「エネルギー・環境に関する選択肢」には、選択肢自体の妥当性や選択肢という手法を用いたことによる、以下のような問題があるように思います。 続きを読む
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2012/07/23
ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ②
前回ドイツ連邦エネルギー・水道連合会HPのデータをもとに、
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- ドイツの電源計画が自国で産出する褐炭(石炭の中でも品質の悪いもの)を主に、化石燃料を中心とする構成になっていること。
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- 北部に大量導入した風力発電による電力を、消費地である南部に届ける送電線の建設が遅れていること。その不安定な電源が流入する近隣国から苦情が出ていること。 続きを読む
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2012/07/20
オーストラリアの電力市場から、価格メカニズムを考える
オーストラリアの電力市場について
オーストラリアは、1998年に公営の電気事業を発電・送電・小売に分割民営化し、電力市場を導入した。ここで言う電力市場は、全ての発電・小売会社が参加を強制される、強制プールモデルと言われるものである。電気を売りたい発電事業者は、前日の12時30分までに卸電力市場に入札することが求められ、翌日の想定需要に応じて、入札価格の安い順に落札電源が決定する。 続きを読む
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2012/07/19
節電どこから何をすればいい?
節電シリーズ その1みなさんこんにちは。消費生活アドバイザーの丸山晴美です。これから、省エネやエコライフなど生活に密着した役立つお話をご紹介できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
第1回目は、夏の節電について何をすべきかをご紹介します。
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2012/07/17
余りにも非常識な原発比率の選択肢案の評価
自然エネルギーの利用を原発廃止のための条件とすべきでないいま、福島原発事故以後の新しいエネルギー政策を創るなかで、政府は、原発の位置づけを発電量の比率の値で表わして、その目標値を決めようとしている。6月28 日、政府のエネルギー・環境会議が、2030年時点における原発比率(国内発電量合計の中の原子力の比率)について、図 に示した3つの選択肢案を、付表に示す評価データとともに政府案として発表した。 続きを読む
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2012/07/13
原子力損害賠償法の改正に向けて⑤
―電力事業の資金調達力に与えた影響について―国の「援助」とは何か-日本独自のスキームが意味するところ
第1回において、各国の原子力損害賠償制度の共通原則を述べたが、事業者に無限責任を負わせ、国が必要な「援助」を行うとした同法第16条は、我が国独自のスキームである。立法当時の議論を振り返る。 続きを読む
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2012/07/12
エネルギー・ミックスの選択にどう向き合うか
経済産業省の総合エネルギー調査会・基本問題委員会における約半年、25回を超える審議を経て整理された、2030年におけるエネルギー・ミックスの選択肢と関連審議会の報告も踏まえて、7月上旬に、エネルギー・環境委員会が、国民的議論を行うための3つの選択肢を提示した。 続きを読む
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2012/07/11
ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ①
7月1日、日本でもとうとう再生可能エネルギー全量固定価格買い取り制度(Feed in Tariff)がスタートした。
こうした制度を活用して再生可能エネルギー導入に成功し、福島原子力発電所事故後早々に脱原発を宣言したドイツは、今後我が国の電力システムを検討するうえでの「理想像」とも言われている。彼の国を理想として追いかけて、たどり着く先は本当に理想郷なのか。 続きを読む -
2012/07/09
温暖化政策、待望の書刊行される!
温暖化政策に関わる者すべてが待望していた書が刊行された。英文による日本の政策提案である。
編著者は山口光恒 東京大学先端科学技術研究センター特任教授。同教授は、温暖化政策の世界的学者であり、IPCCの報告書のリードオーサーはもちろん、日本国内でも政策形成に関連するさまざまな場で委員などを務められている。その権威が編集された新刊の目次をご覧いただきたい。 続きを読む -
2012/07/06
原発電力の代替、当面は石炭火力でなければならない
エコ神話の崩壊が、エネルギー政策の変換を迫る原発電力の代替、当面は石炭火力
いま、脱原発を叫ぶ人々は、原発代替電力は、「自然エネルギー(国産の再生可能エネルギー)による発電」だとしている。しかし、「自然エネルギー」は、少なくとも、現状では、原発の代替にならない。政府は、これを逆用して、「原発がなければ国民の生活が成り立たない(野田首相)」として、原発の温存を図ろうとしている 続きを読む
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2012/07/05
原子力損害賠償法の改正に向けて④
現行の対応スキームから浮かび上がる問題点
免責について-この免責要件に意味はあるか-震災直後に大きな議論となったのは、この東日本大震災が同法第3条第1項ただし書に言う免責要件に該当するレベルの天災地変であったのかということだ。当初東京電力も免責の適用主張を検討していた様子が伺える。 続きを読む
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2012/07/03
エネルギー政策の「国民的議論」に向けて
「国民的議論」とは便利な言葉だ。しかし、実際のところ何を表しているのか不明確。そのうえ、仮にそれに実体があるとしても、その集約方法についてコンセンサスがあるとは思えない。
特に、エネルギー政策のように、踏まえるべき視点やデータを消化することが専門家でも難しいイシューの場合、大衆討議的あるいは国民投票的な方法が意思決定になじむのかという本質的問題がある。 続きを読む -
2012/07/02
新電力にベース電源を分配する前になすべきこと
地域独占と総括原価主義の特権?
6月21日の第7回電力システム改革専門委員会で、卸電力市場の活性化をどう図るかが議論になった。その際複数の委員から、電力会社が長期相対契約で確保しているJパワー等卸電気事業者の供給力について、一部市場に放出すべきとの意見があった。 続きを読む