広域系統運用者はアンバンドリングへの解となり得るか


Policy study group for electric power industry reform

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 こうして見ると、提案されている広域系統運用者と米国のRTOの類似性は明らかだ。ただし、これをわが国で実現していこうとするにあたって、3つの課題を指摘しておきたい。

 まず第一に、全国大の電力ネットワーク利用を広域系統運用者が窓口として担うのであれば、送電ネットワークの利用料金を定める機能が必要ではないかと思われるが(RTOの機能1)、電力会社・経産省の提案のいずれでも十分に触れられていない。現在は各電力会社が託送料を設定しているが、広域系統運用者がこれらに関わることで、「高い」「不透明」という声が根強い託送料の透明化にも一定の役割を果たすことが期待出来るのではないだろうか。

 第二に、広域系統運用者が「短期での需要と供給のバランシング」を技術的・実務的にどう実現していくかが課題となる。その際、電力会社が現在行っているすべての系統運用関連業務を切り離して、広域系統運用者に一本化するというのは現実的には困難だ。米国でも広域での需給バランスはISO/RTOが扱い、電力会社毎のネットワークの操作や電圧の調整などは電力会社の給電所が実施するという役割分担がなされている。安定供給を支えるこれらの業務の内容を毀損しないように、広域系統運用者と電力会社の系統運用業務の適切な役割分担を決める必要がある。

 第三の課題は、広域系統運用者の専門性を支える人材をどのように確保・育成するのかということだ。米国のケースでは、全米にRTOがいくつも作られるので、当該RTOの地域での市場参加者とは関係ない人材を選ぶことも可能だが日本ではそうは行かない。といっても電力会社や新電力会社からの出向者ばかりでは、市場参加者との独立を謳うのも難しいだろう。当面は電力会社などからの移籍組を中心にしながら、徐々にプロパー職員を育てていくのが現実的かも知れない。一方、設備を建設・保守しない広域系統運用者が官僚的な組織にならないようにするため、その職員が各電力会社のネットワーク部門の現場業務にもたずさわる機会を与えたり、相互の異動が可能となるなど人材の流動化も必要だろう。

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