COP17を巡る諸外国の動向等について
手塚 宏之
国際環境経済研究所主席研究員、JFEスチール 専門主監(地球環境)
南北問題の固定化を望む途上国は京都議定書の単純延長に前向き
まず、COP交渉で大きな勢力となっている途上国(新興国、島嶼国、最貧国)は、途上国と先進国が同質の義務を負うべきでなく、先進国のみが法的削減義務を負うべきという原則を頑として譲ろうとしていない。“空白期間”を回避すべきという論点から、京都議定書第2約束期間は必要であり、途上国は自主的な削減行動にとどめるべきという立場だ。
京都議定書は先進国のみに削減義務(と途上国支援義務)を課し、途上国には義務を課さないという意味で、途上国にとって都合の良い枠組みである。その長期固定化はG77+Chinaと呼ばれる途上国グループとしては当然の要求だろう。これは、先進国による途上国開発支援という、従来からの国連の「南北問題」の図式の固定化を意識したものだ。
ただし、気候変動による災害リスクに晒されていると感じている島嶼国、最貧国は「本気で」地球規模の温室効果ガス(GHG)削減を期待しているのに対し、中国とインド、ブラジル、南アフリカの4カ国(BASIC諸国)は、自らの経済成長が今後世界のGHG増加のほとんどを占めるという実態があり、成長制約につながるような、いかなる削減義務も拒否する、つまりGHG排出増を制約させないという立場をとっている。
たとえ先進国が京都型の削減義務を負って努力をしても、BASIC諸国の経済成長による排出増加分はそれを遥かに上回ることが予想されている。GHGが温暖化の主要要因だとすれば、結局、先進国の削減義務だけでは温暖化は回避できない。災害被害を避けたい島嶼国や最貧国とは、本来、利害が対立するはずだ。それでも、交渉の場で協調姿勢がとられているのは、BASIC諸国が中国を中心にアフリカ諸国などへの経済援助などを通じて懐柔を図っているためといわれている。「先進国のみが義務を負い、先進国から途上国に資金を流す」という南北問題としての構図の演出に成功している。