再生可能エネルギー促進法は理解されたか?
堀越 秀彦
国際環境経済研究所主席研究員
安全・安心な社会の実現には、リスク評価やリスク管理を適切に行うことが欠かせない。さらに、社会がリスクと向き合っていくためには、リスク評価やリスク管理にかかわる情報をあらゆるステークホルダーが共有し、対話を通じた信頼関係のもとに問題解決の道筋を共に考えるリスクコミュニケーションが必要となってくる。
このリスクコミュニケーションという手法は新しい概念ではなく、危険物質を扱う事業者やそれを管理する行政機関の多くは、すでに取り組んできたものだ。説明と対話で理解を深めつつ、社会的意思決定に向けてコンセンサスを形成することは、危険を扱ううえで当然のプロセスといえる。
一方で事故などの緊急時には、とにかく目前の危機を回避することが優先される。危機の最中には、普段よりも判断力が低下する人が多くなって当然だし、社会的混乱の恐れもある。このため、多少一方的であっても明確でぶれない情報伝達が必要となる。説明や対話など、コンセンサス形成のプロセスが省略されることもしばしば生じる。しかし、あくまでも緊急時の対応であり、目前の危機を回避するためには有効な面があるが、恒常化すべきものではないだろう。
このような場合には、緊急事態が落ち着いた後には、平常時にも増してリスクコミュニケーションが重要となる。福島第一原子力発電所の事故をみても、これから先、現実問題として放射線防護措置と生活の質との折り合いをつける必要があるが、その際には、リスクの理解と対話によるコンセンサス形成が重要になろう。