再生可能エネルギーの正しい導入方法を考える


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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電力の総量では足りていても送れないという事実

 これだけの費用負担が生じると、国民生活と産業に大きな影響が生じることが避けられない。ただし、原発からの発電量の減少が見込まれる以上、再生可能エネルギーの導入は必要となる。では、どうすれば良いのだろうか。

 一つは、年間の導入量に制限を設け、発電事業者からの再生可能エネルギーの購入については入札制度を導入し、買い取り総額の減少を図ることだろう。また、生活保護を受けているような貧困家庭の電力料金については配慮が必要である。

 欧州の多くの国では、再生可能エネルギー制度の見直しが行われている。この理由は、消費者の負担額が大きくなること、また産業の育成効果が期待されたほどではなかったためだ。異業種によるメガソーラー事業が増えた結果、買い取り額が急増し、電力料金が値上がりした。しかも、送電線網が比較的整備されている欧州でさえ、送電線の増強や蓄電池の導入が必要になっている。欧州と電力事情が異なり、送電線が欧州のようにネット状になっていない日本で、再生可能エネルギーの急速な導入が、成果を生む可能性はさらに小さいと考えられる。

 結局、国民と産業が負担した買い取り費用の大部分は、新興国企業に流れる可能性が大きい。国民生活に寄与し、日本企業や産業界の競争力を強化する、再生可能エネルギーの導入政策はどうあるべきなのかよく考えなければならない。

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