COP17に向け先進国への資金要求強める新興途上国
澤 昭裕
国際環境経済研究所前所長
カンクン合意から5カ月が過ぎ、今年末の第17回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)に向けた動きが各国で活発になっている。なかでも、新興途上国の動きは急だ。2月最後の週末には、BASIC(ブラジル、南アフリカ、インド、中国)とアルゼンチンなどいくつかの途上国が閣僚会合を開催。この会合には、COP17開催国である南アフリカも加わったため注目を集めたが、インドからラメシュ環境森林大臣、中国の解振華国家発展改革委員会副主任、ブラジルのテイシェイラ環境大臣、南アフリカのモレワ水・環境大臣などが名を連ねた。
合意された内容、あるいは各国から主張された内容は次の通りだ。
1.京都議定書第二約束期間への先進国のコミットメントや、途上国への人材育成をはじめとする支援約束などの状況について、国際的なアセスメントを求める。
2.京都議定書第二約束期間への先進国によるコミットメントは、野心的な排出削減と排出量のピークアウトにとって重要。COP17で、先進国は第二約束期間についてコミットし、法的拘束力がある新たな数値目標が第一約束期間の終了後すぐに発効するよう(約束期間にギャップがないよう)にすべきである。
3.途上国のMRV(測定・報告・検証)措置は、先進国に適用されるものよりも煩雑にならないようにすべきである。
4.コペンハーゲン合意では、先進国は早期資金として2010~12年の3年間で300億ドルの支援を約束したが、実際に支払われた金額は10億ドルに届いていない。資金が必要な国に供給されていないことを強く問題視する。
5.技術移転には知的財産権問題の解決が重要(カンクン合意では一旦論点から外れていた知的財産権問題が復活)。また、技術メカニズムと資金メカニズムとの直接リンクが重要。
これらを見てわかるように、主要途上国は先進国に、京都議定書の第二約束期間についてのコミットメントを要求しつつ、「資金を早く出せ」と迫っている。
今や地球温暖化交渉は、環境問題ではなく南北問題、所得再分配問題となりつつある。生物多様性条約についての交渉でも同じことが起こっていたが、先進国にとって気がかりな環境問題への協力を盾に取り、先進国の資金と技術をどれだけ獲得するかが、現在の温暖化交渉の本質なのだ。
先進国が途上国の要求に、どのように対応するのか。各国とも財政状況は最悪であり、途上国を支援したくとも支援する余裕がない。むしろ、先進国は新興途上国の経済成長の恩恵を蒙って、なんとか不況に至らないよう維持しているのが現状だ。世界全体の資金循環をどうするか。今や地球温暖化交渉は、こうしたマクロ経済・金融問題と表裏一体となっているのである。