運輸部門のエネルギー消費量抑制のカギを探る
小林 茂樹
中部交通研究所 主席研究員
最近、地球温暖化対策としての二酸化炭素(CO2)削減目標が話題になることが多い。2010年末には、メキシコでの気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)で、削減に向けた世界的な枠組みの話し合いが行われた。2009年9月の国連総会では、鳩山由起夫前首相により、日本の中期削減目標として「1990年比で2020年までに25%削減する」ことが表明されている。このような流れのなかで、重要なセクターの一つである運輸部門における削減の可能性についても、さまざまな場で議論されてきた。
今回は、運輸部門全体におけるCO2排出量の現状を見たうえで、細分化した各サブセクターごとの特徴や、国・地域別の状況に差があり、世界全体が必ずしも同じ問題をかかえているわけではないことを明らかにする。また次回以降、特に自動車に焦点を当てて、削減の技術的なポテンシャル、その他の施策、そして、将来の途上国の急成長を考慮したうえでの削減の見通しについて議論したい。なお、運輸部門では、CO2以外にも二酸化硫黄(SO2)や炭素微粒子、航空機による巻雲生成など、温暖化に影響するものがあるが、ここではCO2に絞って議論する。