「発展途上国」中国と「大国」中国


国際環境経済研究所理事長

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世界にあふれ出す「大国之道」意識

 2010年、中国は日本を抜いてGDP世界第2位になる。一方で、1人当たりのGDPが3000~4000ドルという途上国でもある。「途上国」中国と「大国」中国という二つの面があるのが中国の実態だ。

 中央集権国家であり“超平等社会”の日本にいると、中国が地方ごとに大きな格差があり、不平等社会であることを理解しにくい。日本の25倍、EU(欧州連合)並みの広い国土に13億人が住む中国を、一つの指標で捉えるのは難しい。

 臨海部は加工貿易で栄える地域である。北京、上海などの大都市の1人当たりGDPは1万ドルをはるかに超える。上海万博後の街行く人々の姿は、先進国の大都会と遜色ない。

 また中部地域も急速に発展している。1950年代、アイゼンハワー大統領時代に米国が建設したインターステートに匹敵する高速道路網が整備され、四川省成都などの中部の街では、デパートやマンションが乱立する。一方、西部のチベット、新疆ウイグル等の貧しい地域は途上国並みの生活レベルである。

 振り返ってみれば、17~18世紀、清朝の康熙帝の時代には中国は世界最大のGDPの国であったと言われている。ところが、アヘン戦争や義和団事変で欧米列強に蹂躙された結果、人々の心のなかには「大国中華」が、この100年間で東夷の日本にまで負けてしまったという「義和団シンドローム」の屈折した気持ちがある。その「中国は遅れている」という意識が、鄧小平による1978年以降の改革開放を邁進させた。

 北京オリンピックや上海万博の成功は、中国の国威を高揚させ自信を回復させた。「大国之道」意識が世界に向けて溢れ出そうとしている。しかし、「昨日より明日が豊かになる」と人々が信じてきた「チャイニーズドリーム」も、実際は党官僚など一部の人たちに富が偏在し、恩恵にあずかれない人たちが大半を占める。貧富の差の増大は、政府の舵取りをますます難しくする。結果として、国内の愛国心に訴え、世界に向かって「大国=覇権」を唱える傾向がますます強くなる。

 日本人の大半は「中国は好きになれない」という感情を持っている。しかし、感情的になることなく、中国の強さと弱さを冷静に研究し、米国やアジア各国とも連携しながら、「大国」中国と対峙することが、温暖化問題において重要だ。

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