なぜアマゾンはSMRに投資するのか


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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(「EPレポート」より転載:2024年12月1日号)

 GAFAMと呼ばれる米国の巨大テック企業は温暖化対策に熱心だ。例えば、グーグルは2030年までに操業を100%脱炭素エネルギーにし、スコープ3までの二酸化炭素(CO2)排出量を19年比50%削減する目標を持っている。しかし、グーグルの昨年のCO2排出量は1430万トン、19年比48%増だった。目標はまだ彼方だ。

 今後生成AIを支えるデーターセンター(DC)の増設が進むと、電力消費とCO2の排出量も増える。世界のDCの電力使用効率は1.58なので、これから改善の余地は小さい。一方、GPU(画像処理装置)の効率向上などによりIT機器の電力消費量が減少する余地があり需要予測が難しいが、需要量は間違いなく大きく増えそうだ。

 脱炭素目標のため、GAFAMは再エネ電源からの調達を進めていたが、DCには安定的な電力供給が必須だ。再エネ電源での供給に不安があり、AIの利用の広がりが話題になり始めたころからGAFAMはDC用に原発の利用を考えていると噂されていたが、事実だった。

 マイクロソフトはスリーマイル島原発1号機の再開による20年間の電力購入を発表した。グーグルは新設される小型モジュール炉(SMR)からの電力購入を決め、アマゾンはX-energy社が進めるSMR開発事業への投資にまで踏み切った。電力購入だけでなく投資に踏み切る理由は、電力供給量を確実に確保するためだろう。

 コンサルタントのマッキンゼーの最近のAIに関する報告書によると、米国のDCの電力需要量は、23年の1500億kWhが30年に4倍の6000億kWhになるとされる。一方、プリンストン大学の研究者の高需要ケースの予測では30年の米国の電力需要は23年から8000億kWh増える。DCに加え電気自動車、ヒートポンプなどの電化による需要増を考えると、DC用の供給力と送電網の能力は十分かとの疑問が出てくる。DCとSMRを隣接地で建設すれば、供給力に関する懸念は和らぐ。巨大テック企業は米国でしか生まれなかったが、その動きは早い。AIとDCでも日本企業は後手を踏むのだろうか。