「再エネ賦課金」は廃止できる?
~国民民主党の玉木雄一郎代表にきいてきました~
山本 隆三
国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授
4月10日付産経新聞の国民民主党玉木雄一郎代表のインタビュー記事注1)の中で、玉木代表が再エネ賦課金について「廃止を含め抜本的見直し」として触れていた。
政府は、23年の1月から導入していた電気とガス料金に関する激変緩和措置を今年5月に廃止したものの、8月からは「酷暑乗り切り緊急支援」の補助金が復活した注2)。一次的な補助金よりも電気料金引き下げの抜本的な対策が必要であることは間違いない。
2000年から固定価格買取制度(FIT)を本格的に導入したドイツは再エネ導入に力を入れていたが、電気料金の上昇を引き起こしたため、2014年にFIT制度を市場価格に対しプレミアムを支払うFIP制度に変更した。2021年には当時の電気料金による負担額1kWh当たり6.5ユーロセントを、3.7セントに引き下げ、ロシアのウクライナ侵攻後の22年7月に電気料金による負担を廃止した。それでもドイツの家庭用電気料金は、約40ユーロセント、70円だ。
日本のFIT制度に基づく負担額は、表の通り業務用太陽光発電設備からの電気の買取を中心に約28兆円だ。燃料代などの節約があるが、それを考慮しても、消費者の負担する電気料金の総額を20兆円近く引き上げただろう。
FIT導入の効果は、自給率を3,4%引き上げたことと、CO2を削減したことだが、22年度の実績から計算すると削減量は、5000万トンから6000万トンだ。コストの高いCO2削減策になった。
日本でも電気料金による負担を税負担に切り替えることは可能かもしれないが、日本とドイツの財政状況は大きく異なり、ドイツのように簡単に進めることは難しいように思える。財務省出身の玉木さんだから何か策があるに違いないと考え、玉木さんのところにお邪魔し話をきいてきた。
玉木さんと私は同じ香川県出身で、私の通っていた小学校は玉木さんの通っていた小学校の隣町にあった。まあ、私の小学校があった町のほうが少しだけ都会だったが、と自慢しても仕方ないほど、ともに田舎であることは間違いない。今は町村合併で同じさぬき市になっている。NHKの朝ドラ「ブギウギ」で笠木シズ子さんの両親の故郷として紹介された東かがわ市は隣町だが、香川県東部の町の雰囲気は今も朝ドラの舞台であった当時とあまり変わらない。
玉木さんから、地元の3高校が統廃合されるという話を聞き、過疎地の現実を突きつけられ落ち込んだが、再エネ賦課金についてどうすべきかおききした。
これから導入される設備については、消費者の負担を可能な限り軽減することは当然として、今までの導入済み設備に対しては、発電された電気を買取る義務があり、支払いも続けるしかない。そんな中で、たとえば、事業者に支払う総額は変更しないものの、支払い単価を切り下げ、期間を延ばし年の負担額を下げるなどの策はあり得るとのご指摘があった。
さて、消費者負担から税負担に切り替える場合の財源をどう手当てするかは難しいのだが、原則国債としながら、たとえばGX債の一部を充てるとのアイデアもでてきた。確かに資金の使い道としては、効果がもっとも大きいかもしれない。
いずれにせよ、これから電化、AIなどにより電力需要量が大きく増える中で安定供給と競争力のある電気料金は欠かせない。競争力のある電気料金をどのように実現するか、うまい解決策が直ぐに出てくるわけはないが、玉木さんのように多方面から様々なアイデアを出してみる姿勢は大事だと感じた。
- 注2)
- 「我慢せず冷房を」って言うけれど…政府支援5000億円の衝撃、日本を襲う停電危機と電気料金上昇で私たちの暮らしと産業はどうなる?
Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) (ismedia.jp)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/34482