AIで成長する地域になる条件は何?
山本 隆三
国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授
(「EPレポート」より転載:2024年6月21日号)
2000年代から日本の電力需要は、波を打ちながら減少している。省エネよりも日本経済の低迷が電力需要減に与えている影響の方が大きいだろう。人口減と相まって、これからも電力需要は減少し、温暖化目標を達成するのだろうか。その可能性は薄く、これから電力需要は増加するのではないか。電気自動車、水素製造もあるが、大きなプラス要因はAIだ。
米電力研究所がAIによる電力需要に関するレポート出した。グーグルの1検索の電力消費0.3Whに対しAIの1検索は2.9Whの電力消費になる。米国は世界のデータセンターの半分強の5381を持ち、データセンターの電力だけで全米の電力消費の約4%、1521億kWhを23年に使用しているが、2030年には最大4039億kWhに成長する。
大きな伸びだが、全米全ての地区が成長するわけではない。データセンターは特定の州に集中している。15州が電力の8割を消費するが、データセンターが集中する15州の特徴は二つに分かれる。
大都市を抱えるカリフォルニア州、ニューヨーク州、イリノイ州、ペンシルバニア州がある一方、残りの州は需要地の近くになく人口も少なく、インターネット回線も多くはない州になる。たとえば、シェール革命まで全米で唯一人口が減少していたノースダコタ州だ。アイオワ州、オレゴン州なども上位だが、これらの州の共通点は、産業用電気料金が、全米平均(24年3月US¢7.73/kWh)を下回り安いことだ。
日本でも間違いなくAIによりデータセンターの電力需要は増えるだろう。だが、全国一律に増えるわけではなさそうだ。インターネット回線が発達し、AIの需要も高い都市部に近い地区と電気料金も土地代も安く、安定供給が期待できる地区にデータセンターの立地は二分化するのではないか。
人口減少社会で地域が成長するためには、付加価値額が高い産業を誘致することがカギだ。データセンターは給与の高い雇用を生み少子化対策にもなる。誘致には競争力のある電気料金が必要になるが、準備にそれほど時間はない。