英国を再度襲う停電の恐怖


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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(エネルギーフォーラム「EPレポート」からの転載:2020年7月11日付)

 主要国で電力自由化をいち早く進めた英国では、石炭火力を中心に老朽化した火力発電設備の閉鎖が進み供給予備率が低下した。そのため電力需要が最大になる冬季、2017年1月には停電の恐怖にさらされた。英国はフランスと送電線がつながっており、通常は電力輸入を行っている。ところが2本ある送電線の1本を嵐に流された漁船のいかりが切断してしまう。

 おまけにフランスでは原子力発電所の部品の品質問題により点検が行われ、電力輸出ができなくなった。さらに、1月中旬、英国では凪が1週間続き、風力発電所が停止した。当初予想の供給予備率6.6%が1.6%に落ち込んだ。

 16年に新設した容量市場と来年完成予定のノルウェーとの間の送電線により、冬場の停電の可能性は少なくなってきたが、今年5月、また停電の可能性が出てきた。今度は供給不足ではなく供給過剰による停電だ。新型コロナウイルスが広がった英国は3月23日から都市封鎖に踏み切った。途端に電力需要は減少を始め、4月6日の週には封鎖前との比較で24%減まで落ち込んでしまう。

 電力需要が落ち込む中で、全国の送電管理者(ナショナルグリッド-ESO)の需給調整対象外の再エネ設備が、供給過剰を引き起こし停電する可能性が出てきた。ESOは「最終手段」として、需給調整対象外の発電設備を送電網から切り離す指示を地域の管理者に対し、ESOが出せる新しい管理規則を埠入し政府の許可も得てしまう。再工ネ事業者への補填はなしの制度だ。

 一方、ESOは再エネ事業者に対し、前日の指示により設備を停止した場合には補填を行う制度を提案する。自主的な参加が前提だが170事業者、240万kWの設備を集めた。結局、最終手段の発動を行うことなく、需給調整を行うことになったが、儒要減により需給調整に掛かる費用が膨らんでおり、5億ポンド(650億円)追加費用が必要になる見通しだ。再エネが供給力の強靭化にふさわしいのか、導入に際し考えることが多い。