MENUMENU

福島の環境回復(2)-10年目を目前にー

除染土壌等の処理と再利用


一般財団法人 電力中央研究所名誉アドバイザー


印刷用ページ

 先の報告で述べたように、帰還困難区域を除いて平成30年末までに面的除染が終了し、それに伴い多量の汚染土壌、汚染廃棄物が発生した。福島県内で発生したそれらは約1,650万m3に達し[1]、これらは多いときで図1に示すように約1,300カ所の仮置き場に保管[1]されるか、仮置き場の設置が困難な地域(福島市、郡山市など住宅密集地)では個人の住宅地などに保管されている(多いときで約15万か所[2])。これらは特措法に基づいてすべて大熊町、双葉町に設置されている中間貯蔵施設に運ばれている。この輸送は図2に示すように2015年度にパイロット輸送として4.6万m3が県内各市町村から運ばれたのをはじめとして、その輸送量は年ごとに増加していき、2019年には405.9万m3が輸送され、これまでに668.3万m3(2019年8月直轄、2019年6月非直轄)が輸送され2021年度にはほぼ輸送が終了することになっている[3]。これに伴って、これまで使ってきた仮置き場(当初は3年程度の保管とされたが中間貯蔵施設の候補地、設置等に時間を要し予定より長期的な使用となっている)の原状復帰(設置前の状況に戻し地権者に返還すること)が行われている。また、その長期利用に伴って仮置き場で使用している資材(フレコンバッグ等)の耐久性も確認する必要があり、福島県環境創造センターなどでその健全性試験が行われている[4]


図1 福島県内の仮置き場数の推移[1]

 また、輸送に関しては、地域の生活道路である一般道路はできるだけ使用せず、効率的で迅速な運搬のため常磐道に2018年度には大熊IC、2019年には常磐双葉ICが設置され大幅に輸送量が増加した。この輸送の車両は輸送はGPSで管理され輸送車両の走行状況がリアルタイムで見られるようになっている[5]


図2 除染土壌、廃棄物の中間貯蔵施設への年度ごとの輸送量

 一方、中間貯蔵施設は約1,600haの土地が用意され、仮置き場から輸送してきた汚染土壌、廃棄物の受入・分別施設、土壌貯蔵施設、さらに分別後伐採木、解体家屋などは焼却施設で焼却、減容化されその焼却灰(放射性セシウムが濃縮)は廃棄物貯蔵施設で貯蔵されることになっている。この中間貯蔵施設での貯蔵期間は貯蔵開始から30年以内とされ、その後は福島県外の処分場(場所未定)で処分されることになっている。一方、これまでに中間貯蔵施設に運搬された汚染土壌や廃棄物は図3 に示すように汚染土壌が約92%(このほか可燃物が6%程度)あり、そのうち約82%が8000Bq/kg以下注1)である。中間貯蔵施設では8000Bq/kg以下の土壌とそれ以上の土壌を分類して夫々雨水の侵入を防ぎ、また汚染土壌粒子や放射性セシウムが地下水に移行しないような養生を行い貯蔵している。今後もこのような分別や貯蔵を進めるとともに、低汚染土壌の有効利用(再生利用)や最終処分量の低減に向けて汚染物の減容化が重要な課題となってくる。低汚染土壌についてはその線量を低減させるため、その上層に十分な遮蔽(覆土)を施したり地下水への侵入を防ぐ措置を講じたうえで道路等の構造物の芯材としたり農業用に利用することが考えられる。現在飯舘村の長泥地区の特定復興再生拠点で農地への利用の実証試験が行われている。図4にその状況を示す[3]。この場合の放射線量は供用中では年間の被ばく線量は0.01mSv(施行時、修復時の作業員の被ばくは年間1mSv以下)で、これは原子炉等規制法でのクリアランスレベルに相当している。しかし、住民の中には放射線に対する不安や風評被害から反対の意見もあり、再生利用を進めるにはそれらの人々の意見も十分聞き対話を繰り返すことが求められる。さらに、その利用に関しては災害時の復旧資材の一部として全国大利用していくなども考慮すべきであろう。


図3 中間貯蔵に搬入された汚染土壌、廃棄物の種類と放射能濃度


図4 再生土壌利用実証試験の状況(飯舘村長泥地区)

 一方、最終処分に向けてその処分量を減らす観点から可燃物の焼却処理も進められている。大熊町、双葉町の中間貯蔵施設内に3基で合計容量550トン/日の焼却炉が設置されている[7](中間貯蔵施設外にも国の焼却炉が稼働しており両者の合計容量は1470トン/日)。ここで発生する焼却灰には減容前に含まれていた放射性セシウムの大半が含まれ100,000万Bq/kgを超えるものも発生すると考えられる。この焼却灰は比較的可溶性であり十分な難溶化(固定化)対策を講じるとともに遮蔽性能を有した耐久性を有する保管容器に密閉して保管する必要がある。以上述べたことから、再生利用と放射性物質濃度が高いものの最終処分が、除染で発生した放射性汚染物の最終形態になると考えられるが、まだ最終処分については具体的な姿が見えていない。このため、国や関係機関は最終処分に向けてどの程度の量を処分するか、その放射能濃度は、処分の形態は、施設の要件は、安全性はどのように担保されるか等を場所の選定の前に検討し、早期の段階(原子力関連施設では計画から設置まで30年以上を要している)から住民、国民との対話を進めていく必要があると筆者は考える。
 上記では除染から発生した土壌や廃棄物について触れてきたが、旧警戒区域及び計画的避難区域から発生した廃棄物(特定地域内廃棄物)、福島県内から発生した汚泥、麦藁、たい肥等(指定廃棄物)のなかで焼却できるものは、その地域に設置されている焼却炉で焼却して、8000Bq/kg以下のものはその地域にある廃棄物処分場で処分され、焼却灰等100,000Bq/kgを超えるものについては先に述べた中間貯蔵施設で保管される。一方、その中間の8000Bq/kg – 100,000Bq/kgのものは富岡町に設置されていた既存の管理型処分場を活用して特定廃棄物埋立処分事業を行っている[3,8]。この処分場についても雨水の流入防止、放射性セシウムの処分場からの漏出水への流出防止、地下水への漏洩の防止を図るとともに長期にわたり流出水等のモニタリングが必要となる。また異常気象時の異変対策も事前に考慮しておく必要がある。
 以上述べたように放射性物質で汚染された地域の環境修復では多量の汚染物質が排出され、それらは種類や特性(化学的、物理的、放射能量・半減期など)、人体への影響を十分勘案して貯蔵処分を行うことになるが、それらの要件も踏まえ合理的な最終処分方策(資源となる土壌などは再生利用もその一つ)を探っていくことが必要である。しかし、いずれの方策を取るにしても住民ひいては国民の理解は不可欠でありそれらの情報は遅滞なく公表し対話を進めることが必須の事項である。

注1)
8000Bq/kgの廃棄物を通常の処理方法で処理する場合、周辺住民及び作業者のいずれの被ばく線量も、原子力安全委員会の 示した目安である1mSv/年を下回ることがシナリオ評価によって確認されている。
<参考文献>
 
[1]
環境省除染情報サイト、http://josen.env.go.jp/soil/temporary_place.html
[2]
福島県「除去土壌の保管状況(平成30年12月末時点)」 https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/07kariokiba-hansyutsu.html
[3]
環境省環境再生・資源循環局「被災地の復興・再生にむけた環境省の取組」、2020年3月4日、同詳細版 2020年3月7日
[4]
環境創造センター連絡調整会議「環境創造センター事業評価 【フェーズ1】 平成 27 年(2015 年)度~平成 30 年(2018 年)度」平成 31 年(2019 年)2月
[5]
JESCO 「除去土壌等の輸送車両の走行状況」https://www1.jesconet.co.jp/interim/trucktraveling/contents/O010040/WO0040/WO0040.html
[6]
環境省環境再生・資源循環局「福島県内除去土壌の再生利用に関する向けた検討状況について」令和元年6月
[7]
環境省「中間貯蔵施設の整備の現状」、令和2年4月7日、http://josen.env.go.jp/plaza/info/data/pdf/data_2004_04.pdf#page=3
[8]
環境省 特定廃棄物の埋立処分事業情報サイト、http://shiteihaiki.env.go.jp/tokuteihaiki_umetate_fukushima/


福島レポートの記事一覧