第3回 電力の安定供給とCO2削減の両立をめざす〈前編〉
電気事業連合会 森﨑 隆善氏(電気事業連合会 立地環境部長) ※インタビュー当時の役職
インタビュアー&執筆 松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
――火力の高効率化はどれくらい進んでいますか?
森﨑:2014年度は、合計で約480万キロワットの最新鋭の高効率火力プラントを導入しました。また、既存プラントも適切なメンテナンスを行い、2014年度の火力熱効率は46.1%となりました。(図2)東日本大震災以降、火力炊き増しのため経年火力が稼働する中においてもメンテナンスの徹底に努め、結果として火力の熱効率を維持できました。
LNG火力については、今後も熱効率が60%を越える世界最高水準のLNGコンバインドサイクル発電などの計画・建設を進めてまいります。石炭火力は、他の燃料に比べてCO2排出量が相対的に多いですが、最新鋭の600℃級の「超々臨界圧石炭火力発電(USC: Ultra-Super Critical)の導入を進めています。また、従来型の石炭火力発電では利用が困難な灰融点の低い石炭も利用できる1200℃級の「石炭ガス化複合発電(IGCC: Integrated Coal Gasification Combined Cycled)」を開発導入し、高効率化とあわせて利用炭種の拡大も図っていきます。最新鋭のプラントでは熱効率も大幅に向上しており、CO2の低減に努めたいと思います。(図3)
さらに2030年以降を踏まえて、技術革新が必要です。究極の高効率発電技術である石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC: Integrated Coal Gasification Fuel cell Combined cycle)とCO2分離・回収を組み合わせた革新的低炭素石炭火力発電の実現を目指す目的で、経済産業省の補助事業である「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業」として「大崎クールジェンプロジェクト」に取り組んでいます。火力発電はどうしてもCO2が出ますので、CCS (CO2回収・貯留技術)を付設する必要性も言われています。CCSはまだまだ課題が多いですが、課題解決に向かって、国が主導する大規模実証試験に積極的に協力しつつ、我々としてもCCSに関連する技術開発を推進しています。
――CCSの実用化の目途は?
森﨑:まだ具体的な目標は掲げづらい状況ですが、2030年以降を目指しています。実用化のハードルは高いので、今からしっかり進めていかないといけません。新しい技術を開発するためには、初期コストが相当かかりますので、政府の支援をいただかないとなかなか進みません。技術はいつブレークスルーが起きるかわかりませんので、いろいろな可能性を追及しながら進めてまいります。(図4)