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石炭火力発電所の新設計画に、「待った」をかけた環境大臣(その1)

石炭火力の新設計画に「待った」をかけなければならない科学的根拠が見当たらない


東京工業大学名誉教授


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 確かに、いま、経産省が進めている日本のエネルギー政策(エネルギー基本計画)のなかで、電源構成のベストミックスが最重要課題としてとり上げられている。しかし、電力消費は、化石燃料資源量換算で表した一次エネルギー消費のなかで、現状で、4割余程度しか占めていない。したがって、CO2の排出削減を考えるのであれば、残りの6割近くを占める一次エネルギー消費(電力以外)を含めた一次エネルギー消費(合計)のなかのCO2排出量の削減について考えなければならない。IEA(国際エネルギー機関)のデータ(エネ研データ、文献1-2から)から、日本の化石燃料消費に伴うCO2排出量の値を計算して表1-2に示した。この表に示すように、日本の一次エネルギー消費に伴うCO2の半分近くは石油によるもので、電源構成のなかで半分近くを占める石炭ではない。すなわち、CO2排出量の最小化を図るためとして、電源構成のなかの石炭火力の比率のみを問題にすることはできないと考えるべきである。
 説明が、ややこしくなったが、上記から、今回の環境大臣の主張が、科学的に全く根拠のないものであることが判って頂けると思う。

表 1-2 日本の化石燃料消費に伴うCO2排出量(百万CO2トン)、2012年
(IEAデータ(エネ研データ、文献1- 2から)をもとに計算して作成 *1 )

表 1-2

注:

*1;
(各燃料種類別CO2排出量)=(各燃料種類別CO2排出量原単位(CO2トン/石油換算トン):石炭3.96、石油3.07天然ガス2.35)×(各燃料の一次エネルギー消費の石油換算量)として計算した
*2;
括弧内数値は対合計百分比率
*3;
電力生産でのCO2排出量は、一次エネルギー消費に伴うCO2排出量合計の39.5%(=527.7/1,335.0)を占める。

政府のCO2排出削減目標は、電源構成のなかの石炭の使用比率とは直接的関係がない

 今年(2015年)の暮れに予定されているCOP21に向けて、2030/2013年比のCO2排出削減率26%の目標数値が政府により提示された4月30日の2日前の28日に、経産省により発表された2030年度の電源構成のなかの石炭の使用比率の推定値26%が発表されている。
 しかし、この政府の二つの発表数値の関係につては、先に私が、このときの報道(朝日新聞(2015/5/1))を引用して述べているように、直接的な関係がないことが指摘されなければならない(文献1-3)。すなわち、政府のCO2排出削減率26%の値は、国内のエネルギー消費の各部門(産業、民生、および運輸各部門)別の2030/2013年比のCO2排出削減率が推定された上で、それらを合計した値である。その算出に当たっては、各エネルギー消費部門別に、エネルギー消費構造の変革と省エネの徹底の両面での定量的な評価・検討がなされなければならない。例えば、運輸部門でのガソリン自動車を電気自動車の利用に変える場合のように、各エネルギー消費部門での電力化率(エネルギー消費(合計)のなかのエネルギー消費(電力)の比率)の改変も必要になる。この電力化率の改変も含めて、一次エネルギーの消費に関わるエネルギー取得コストの最小化を求めた結果が26%にならなければならない。
 いま、3.11事故の影響を受けて、原発電力の利用に国民の同意が得られないなかで、電力の自由化を目前に控えて、エネルギー供給を事業としてきた電力会社などが、より安価な電力の生産に石炭火力を用いることは、日本経済の生き残りにとっても当然のことと考えるべきである。これを、表1-1に示すような科学的に根拠のない理由で、CO2排出を促進するとして規制しようする環境大臣の対応には猛省を促したい。

引用文献

1-1.
久保田宏;科学技術の視点から、原発に依存しないエネルギー政策を創る、日刊工業新聞社、2012年
1-2.
日本エネルギー経済研究所編;「EDMC/エネルギー・経済統計要覧2013年版」2014年、「同2015年版」2015年、省エネルギーセンター
1-3.
久保田宏;2030年度電源構成のなかの再生可能エネルギー(再エネ)の意味を考える(その3)COP21に向けて日本に求められるのは、世界の化石燃料消費の具体的な削減提案でなければならない、ieei、2015/06/03

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