再エネ全量固定価格買取制度の 回避可能費用をめぐる迷走
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
この問題を取り上げた最初のブログ(2013年11月6日付)で議員は、論旨イのように強い調子で、経産省と電力会社を批判した。しかし、この論旨が間違っていることは、「単純過ぎる再エネ”ボッタクリ”論」で指摘させていただいたし、石川和男氏も「再生可能エネルギー賦課金を巡り流布される奇妙な誤解 本来のFIT改革は高過ぎる買取価格の引き下げ」で詳しい解説とともに指摘されている。
簡単に示すと;
固定買取価格=再エネ賦課金(サーチャージ)+回避可能費用
という式が成り立つ。固定買取価格が一定であれば、回避可能費用を高くすると、サーチャージが安くなり、需要家の負担が減るように錯覚するが、回避可能費用は電気の仕入価格で電気料金原価の一部であるので、その分電気料金は上がって、需要家の負担は変わらない。少なくとも回避可能費用が安いことにより電力会社が儲けることはない。
経営努力を持ち出すのはフェアではない
上記主張に対して、議員は、2回目のブログ(2014年3月13日付)で、論旨イを訂正することはせず、論旨ロの反論を展開した。しかし、論旨ロは、電力会社が当時の回避可能費用の考え方の下で不当に儲けていることを証明していないので、上記主張に対する反論になっていない。固定価格買取制度の制度設計において、回避可能費用として全電源平均発電単価を選択するか、卸電力価格を選択するかによって、電力会社の儲けが変化することはないし、需要家の負担が変化することもない。これは理論上明らかだ。対して、論旨ロは、これから回避可能費用を見直しても、論旨イが正しく見えるように、それに伴う仕入れ価格の上昇は電力会社が経営努力で吸収しろ、との論を追加されているだけだ。
「自由化の下では、仕入れ価格を即小売価格に転嫁することはできない」は一般的には正しいが、購入単価も購入量も交渉の余地がなく(購入単価は調達価格等算定委員会の意見を反映して経済産業大臣が決定したもので、購入量は再エネによる発電電力量全量である)、政策で買い取ることが定められた商品の仕入れ価格に対して、経営努力を持ち出すのはフェアではない。経営努力を持ち出すなら、仕入れ価格にも経営努力の余地があるべきだ。
消費税の増税とも似た、むしろ量がコントロールできない分消費増税よりも強制力が強い再エネの買い取りについて議員がこう主張するなら、消費増税も価格に転嫁せず経営努力で吸収せよ、と主張していただかねば辻褄が合わない。