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「転向者」との会話


国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任教授


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 確かに福島原発事故の後も英国とドイツの対応の違いは際立っている。駐日ドイツ大使はいち早く大阪に「避難」し、メルケル政権は脱原発に急激に舵を切った。これに対し、ウオーレン駐日英国大使は原発事故後も東京にとどまり、ベディントン英国政府首席科学顧問は日本在住の英国人に対し科学的根拠に基づいた冷静な情報を提供し続けた。英国の世論調査では原発事故で死者が出なかったことにより、むしろ原発への支持が増大した。環境エディターとして世界的に有名なガーディアン紙のジョージ・モンビオットは「福島のおかげで原子力が大好きになった」(Why Fukushima made me stop worrying and love nuclear power?)という記事を書いた(蛇足だが、この表題は冷戦時代の核の恐怖を描いたスタンリー・キューブリックのブラックユーモアの傑作「博士の異常な愛情」(Dr.Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb)のもじりであろう)。

http://www.theguardian.com/commentisfree/2011/mar/21/pro-nuclear-japan-fukushima

 もちろん地震がほとんどないという事情もあるのだろうが、大きな背景は英国人のプラグマティズムと冷静さであるように思われる。英国のエリートはその育成過程で「白黒のつかない、どっちつかずの状況に耐える」能力を叩き込まれるのだという。どんな事態の下でも100%の回答(例えば100%の安全性)を求めず、プラグマティックに対応するというのもそんなところが影響しているのかもしれない。

 スティーフン・ティンダールと別れ際、彼の襟元に金色の風車のバッジが付いているのに気がついた。「これは風力発電ですか?」と聞いたところ、「そうだ。自分は原発を支持しているが、再生可能エネルギーも推進すべきだと考えている。原子力を支持する人の中には再生可能エネルギーを否定する人がいるが、それは間違っている。原子力か再生可能エネルギーかの二者択一ではない。両方必要なのだ」と答えた。こうした議論が日本でも広がることを期待したい。

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