環境と経済が両立に向かう『土壌汚染対策』とは(その7)
経済問題との関連②:会計・非財務・融資
光成 美紀
株式会社FINEV(ファインブ)代表取締役
不動産関連だけでなく、企業会計や情報開示、金融機関の融資においても土壌汚染に関するルールが規定されるようになっています。
≪企業会計(財務報告)≫
国内の企業会計においては、土壌汚染対策法を明示して、土壌汚染に関する会計処理が規定されているものはありませんが、引当金と資産除去債務の会計処理により将来の土壌汚染対策費等が計上されることがあります。
引当金については、土壌汚染対策費が将来発生する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には土壌汚染対策引当金等の名目で計上することになります。なお、発生の可能性が低い場合は、偶発債務として引当金計上せず注記という形で開示します。
資産除去債務については、法令または契約で要求される有形固定資産の除去時のコストについて、将来の債務として認識し計上します。例えば、水質汚濁防止法の特定施設廃止時の調査費用は資産除去債務の要件を満たしますので計上している企業があります。ただし、土壌汚染対策法による法的義務が限定的であることから、会計上処理している企業は少ないのが現状です。米国や欧州では、環境対策費用の計上に関する科目をどのように認識するか、また具体的な事例等がガイドラインなどで規定されています。
米国の会計基準では、現在、米国財務会計基準審議会 会計基準410号「資産除去債務と環境債務(ASC 410)」において、対象となる米国環境保護庁の環境法(包括的環境対処補償責任法,CERCLAや資源保護回復法, RCRA他各種環境法)などの適用が具体的に明示されており、実務的な事例も記載されています。
国際会計基準においても、IAS37号「引当金、偶発債務及び偶発資産」において、土壌汚染対策費に関する事例が提示されています。法令上の義務または推定的義務(契約上の義務等)があり、合理的な見積もりができるときには、債務として認識することが記載されており、これに該当すれば土壌汚染対策費等の債務が計上されます。
≪環境・CSR報告(非財務報告)≫
環境省が発行する環境報告ガイドラインでは、2000年版のガイドラインから、土壌・地下水汚染等の状況を開示することが推奨されています。最新版(2012年版)においても、事業活動に伴う環境負荷及び環境配慮等の取組に関する状況を表す情報として土壌・地下水汚染の調査や自主的取り組みの状況等を記載することが推奨されています。
また、CSR報告書の世界的なガイドラインとなっているGlobal Reporting Initiative (GRI)においては、2013年に発行されたG4において、各社が重要性の高い事項を記載する方針となりました。GRIでは、セクター別ガイドラインで、エネルギー・重工系企業等、土壌・地下水汚染の影響が大きい業種については、情報開示が推奨されています。