久しぶりのボン(その1)
-省エネ専門家会合に出席-
有馬 純
国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任教授
午後はいよいよ私がファシリテーターを務める省エネ専門家会合の開始である。国連プロセスで議長もしくはファシリテーターを務めるのは初めてであり、正直、不安もあったが、唯一の安心材料は、合意文書をとりまとめる必要がないことであった。基本的に各国の知見を持ち寄るワークショップスタイルのものであるため、ファシリテーターとしてのサマリーも文言調整をする必要はない。また途上国を含めて省エネの議論をするということでは、東アジアサミットプロセスでエネルギー専門家会合の共同議長を務めたこともあるので、何とか乗り切れると思っていた。
12日午後から13日午前、午後にわたる専門家会合では各国、国際機関からのプレゼンテーション+質疑応答と「途上国において省エネを更に進めるために何が必要か」「そのために国連を含むマルチのプロセスでどのような貢献ができるのか」という議論を行った。各国からのプレゼンは南ア、コロンビア、日本、シンガポール、デンマーク、インド、国際機関からのプレゼンはIEA(国際エネルギー機関)、IPEEC(国際省エネ協力パートナーシップ)、UNEP(国連環境計画)、GEF(地球環境ファシリティ)、EBRD(欧州復興開発銀行)、世銀等である。これに加え、国連事務総長の肝いりで作られたSE4ALL(全ての人々のための持続可能なエネルギー: Sustainable Energy for All)や、持続可能な低炭素運輸パートナーシップ、都市間パートナーシップのC40 for Cities が参加した。
ファシリテーターとして最も苦労した点はタイムマネジメントである。全体で6時間の枠の中で15人のプレゼンターがいる。プレゼンテーションはあくまで議論の材料であり、プレゼンテーションと質疑応答だけで終わったのでは意味がない。それを踏まえた全体討議にまとまった時間を確保する必要がある。そのためには各スピーカーに10分という持ち時間を厳守してもらう必要があるが、この手のワークショップの常として時間を超過しがちである。しかも途上国がG77内調整を行っている間は開会できないので、6時間という枠は実質上4時間半くらいに目減りしてしまった。このため、ファシリテーターは常に時計とにらめっこしながら、会議終了時間の6時を越える時間延長を出席者にお願いする等して、タイムマネジメントに汲々とすることになる。
もう一つ苦労した点は、各セッションをどう締めくくるかだった。プレゼン+質疑応答の後、全体討議をするのだが、その後でファシリテーターとして、それなりに議論を反映したサマリーを口頭で行う必要がある。各自のプレゼン内容を事前に入手していたため、大まかなラインを事前に用意しておくことはできるが、会議は生き物であり、どちらに転がるかわからない。手元のメモに会議中に出てきた主要な論点を書きとめ、各セッションのサマリーに反映させるよう心がけた。
2日間の専門家会合を通じての主要なサマリーと私が感じたことについては次回に記すこととしたい。