中国に環境NGOがあるの?


国際環境経済研究所理事長

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 4/22付の中国の連合鋼鉄HPによると、NGO 5団体が4/21「河北省のスモッグ防止への国民監督」と題するレポートを発表したとある。

 それによると、山東省、河北省、天津市、北京市の4省市を合わせた石炭消費量は計8億トンあり、うち火力発電で3億トン、残り5億トンは鉄鋼などの企業や生活用である。
 脱硫対策は火力発電では普及しているが、中小規模が多い鉄鋼やガラス、セメント産業では本格的な脱硫設備が取り入れられず、石炭中の硫黄含有率を1%とすると、1000万トン相当のSO2が大気に放出される計算になるとしている。
 さらに、NOX、ダイオキシン、重金属対策も手つかずとある。

 内容はともかく、このレポートをニュースリリースしたのが、北京水源保護基金会・自然大学基金というNGOである。

 長く日本にいる中国人の友人は、「中国に環境NGOがあるの?」とびっくりしていた。

 中国は公害対策として環境法制を整えつつあるが、環境に関する情報公開はまだまだ不十分である。一方で、多数の環境NGOが存在し、地方政府や企業に対して汚染情報の公開を要求していることはあまり知られていない。

 私が中国に駐在していた2000年代の半ば、江蘇省の太湖が緑に染まったことがある。湖の周辺の生活排水、工業排水が流れ込み、冨栄養化でアオコが大量に発生し、魚が大量死したことで大問題となった。

 この時、北京において馬軍(Ma Jun)という民間人が汚染企業を実名で告発した。大抵の中国企業は、これを無視したが、環境コンプライアンスに敏感な日欧米のグローバル企業は、これに対して馬氏と対話したところがあったと聞いている。
 彼はこうした活動を通して、2006年、米国TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、現在も、公衆環境中心(Institute of Public & Environment Affairs (IPE))というNGOを主催している。
 「中国水質汚染地図」等のデータベースを公表し、企業ごとの情報公開の程度を示したランキングもつけている。英文のサイトも、年々、充実しており、日欧米企業のみならず中国企業も無視できない存在になりつつある。

 このような環境NGOは中国各地で散見される。
 
 しかし、中国においては、非営利団体であっても政府に登録が義務付けられており、大半は政府OBが名を連ねる御用団体であり、草の根NGOは限られている。集会を開こうとすると地方政府から許可されないなど嫌がらせを受ける一方、企業に対して利益供与を迫る悪質な団体もあると聞いた。

 もっとも、政府に都合の悪い報道が抑制される中国にあって、NGOは情報の公開という言う意味で貴重な存在と言えるかもしれない。

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