単純すぎる再エネ賦課金“ボッタクリ”論
河野太郎議員が火をつけた「回避可能原価」議論を整理する
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
(「WEDGE Infinity」からの転載)
先日河野太郎衆議院議員が「経産省によるボッタクリ」と題したコラムをブログに掲載した。「また単純な……」と溜息をついていたら、この主張に沿った報道もいくつか続いているので、問題点を整理したい。
●毎日新聞2014年1月6日
「再エネ買取:電気料金に過大転嫁、年1000億円と試算」
●東洋経済2013年12月17日
「年間1000億円も電気料金へ不当に上乗せか」
河野議員の主張は、「自然エネルギー電力の買い取り費用のために、家庭等の電力料金に上乗せされている再エネ賦課金のうち1000億円以上が、そのまま電力会社の懐に入っている!」というもので、その理由は「経産省による回避可能費用は不当に安く計算され、消費者が負担する再エネ賦課金が巨額になっている」からとしている。
この論旨の一部は、全くの間違いであり、「ボッタクリ」という表現は適切ではない。
消費者の負担の形態が異なるだけ
まず、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度(Feed in Tariff。以下、FIT)の仕組みについて説明したい。
電気事業者は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」によって、再エネによる電力を予め定められた割高な固定価格で買い取ることを義務付けられている。電気事業者が「賦課金として」消費者に負担を求めることができるのは、再エネの買取に要した費用全額ではない。電気事業者は、再エネの電力供給を受けた分は、自分では発電せずに供給できているので、発電をしなかったことによって節約できたお金(回避可能費用という)を差し引いた分を「賦課金として」計算する。
回避可能費用は経済産業省の告示に基づき、電気事業者の全電源平均の変動費が採用されている。氏もブログで紹介している通り、
再生可能エネルギー賦課金=再エネ買取費用+事務経費-回避可能費用
であるから、回避可能費用が小さければ賦課金は大きくなる。水力や原子力など、発電単価の安い電源を含めて全電源平均で回避可能費用を計算することでこれが過小となり、その結果再生可能エネルギーの賦課金が「不当に」膨らんでいるというのが氏の主張であり、発電コストの高い火力発電の単価を反映させるべきであるとしている。