低炭素社会実行計画(一般社団法人 セメント協会)
一般社団法人 セメント協会
Japan Cement Association
セメント産業は、様々な自然災害から人々の命や暮らしを守る強固な躯体を持つコンクリート構造物やセメント系固化材により改良された地盤の基となる製品を提供して「安全が確保される社会」を支えています。また、他産業や一般家庭から発生する廃棄物・副産物の一部を天然資源の代わりの原料やエネルギーの代替として活用し、セメントを製造することにより「循環型社会の構築」にも貢献しています。
セメント産業は低炭素社会実行計画の柱である「国内の事業活動における2020年の削減目標」、「主体間連携の強化」および「国際貢献の推進」の各項目について、目標、考え方を公表しています(http://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/jg1k.html)。
1.セメント製造用エネルギーの低減
セメント産業では、セメント製造用エネルギー注1)の低減に努めてきました。環境自主行動計画においては、2008〜2012年度におけるセメント製造用エネルギー原単位の平均を1990年度比3.8%低減させるとの目標に対し、4.4%減を達成しています(図1)。
引き続き、低炭素社会実行計画では、「省エネ技術(設備)の普及」および「エネルギー代替廃棄物等の使用拡大」を推進することによるセメント製造用エネルギーの低減を目指し、2010年度比で、原油換算として5.6万klの削減を目標としています注3)。
- 注1)
- 「セメント製造用熱エネルギー注2)」+「自家発電用熱エネルギー注2)」+「購入電力エネルギー」の合計
- 注2)
- エネルギー代替廃棄物による熱エネルギーは含めない。
- 注3)
- 本削減量は2020年度の生産量見通しを56,210千tとし、BAUを前提としている。
2.コンクリート構造物の供用時における環境負荷の低減
セメントはコンクリート材料の一つであり、コンクリート構造物の供用時における環境負荷の低減といった観点で「主体間連携」を考える必要があります。
例えば、建築物においてコンクリートを用いた場合の高断熱性や高耐久性などが挙げられます。
セメント協会では舗装面の材料による自動車の燃費に着目し、海外の調査結果も踏まえて、独自に検証を行いました。その結果、道路の舗装面が「コンクリート」の場合、「アスファルト」の場合と比較して重量車の「転がり抵抗」が小さくなり、重量車の燃費が向上することが分かりました。1台あたりの数字はとても小さいものではありますが、継続的なCO2の削減が可能となります。
セメント協会は今後もコンクリート舗装に関する材料・工法の検討を行い、コンクリート舗装の普及を進めていきます。
<具体的な削減効果の試算結果>
積載量を11tとし、100km走行した場合
3.循環型社会の構築への貢献
セメント産業では廃棄物・副産物を活用してセメントを製造しており、2012年度の実績で、5,931万tのセメントを製造するのに、2,852万tの廃棄物や副産物を使用しました。これは原単位で示しますと481(kg/t-セメント)になります(図2)。
セメントの製造では、CaO、SiO2、Al2O3、Fe2O3等からなる化合物で構成されるクリンカと呼ばれる中間製品を焼成しています。これらの成分は石灰石、粘土類、けい石、鉄原料等の原料を起源としていますが、同様の成分を含む材料はこのクリンカ原料の一部の代替に用いることができます。
また、化石エネルギーの代替として可燃性廃棄物も利用しています。セメント工場において可燃性廃棄物を使用する場合、その灰をクリンカの原料としても活用できるため、熱エネルギーの活用だけでなく二次廃棄物を出さずに灰も含めた全てが有効利用されるという特徴があります。
さらに、廃棄物・副産物を受け入れることにより、本来必要とされる最終処分場の容積を減らすことができ、国土の狭い日本にとって重要な最終処分場の延命化に貢献できることとなります。2012年度、セメント産業は約2,850万tもの廃棄物・副産物を受け入れており、最終処分場は8.0年延命されていると試算されています。
このように、廃棄物の活用は「循環型社会の構築」であるとともに、最終処分場の延命の点で重要です。そういう意味で、セメント産業における廃棄物・副産物の活用も「主体間連携」といえます。
4.日本のセメント産業の情報発信
日本のセメント産業は古くから省エネルギーに努め、また、廃棄物・副産物の有効利用も早くから実施してきており、これらの経験や情報を発信することは世界的にも有用であると考えられます。
世界的にみたセメント製造エネルギーの削減や循環型社会の構築の一助となるべく、日本のセメント産業に関する情報発信を行ってまいります。
セメント協会は、これらの低炭素社会実行計画の取組みによって、地球温暖化対策へ貢献していく所存であります。